医師不足2

2004年度から医学部卒業後2年間の初期研修が義務化されて、研修医が一般病院を研修先に選んだ所、大学病院の人手不足が発生し、地方へ派遣していた医師を戻したことで、地方の医師不足楽天 という事態になりました。

日本医師会の2008年の調査によると、大学病院の77%が約3000病院への派遣中止や減員をして、約500施設が診療科の閉鎖を余儀なくされました。2009.5.25読売新聞から

関空診療所、医師不足で撤退か

関西空港の診療所が近畿大の医師不足を理由に撤退を申し出たそうです。今年度末までの継続は決まったが、先行きは不透明なままだそうです。

1994年の開港時に診療所は旅客ターミナルに開院されました。24時間体制で医師と看護師各1人が常駐し、昼間(AM9~MP5)は近大が関空会社へテナント料を支払い、夜間は近大が同社から委託される形で運営していました。

ところが、近大医学部付属病院の慢性的な医師不足と、診療所の年間利用者数は95年度の約1万2200人をピークに減少し、2009年度は約4800人に落ち込み、開院以来の赤字経営解消はほとんど困難となりました。

同社は、夜間診療とテナント料の廃止、昼間診療の委託への切り替えなどの条件を提示し、近大の了承を得て、運営を継続しています。

診療所が閉鎖されると、急な発熱をした旅行客は、対岸の病院まで行く必要がありとても不便になります。

国内拠点空港の診療体制

空港名 診療所数 サービスの内容
成田 2 24時間対応の救急医療、内科、外科、眼科など、人間ドックも実施
羽田 3 診療時間は午後11時まで、パイロット向け航空身体検査、禁煙外来
中部 1 診療時間は昼間のみ、5コースの健康診断あり、2次検診も可
関西 1 主に内科、外科で診療時間は昼間のみ、健康診断も受け付ける

医師不足の現状・2010年9月

毎日新聞の2010年9月30日の東京朝刊によりますと、厚生労働省は29日、全国の病院と分娩(ぶんべん)を扱う診療所を対象に実施した「必要医師数実態調査」の結果を正式に発表しました。

特に不足が深刻な分娩を扱う医師は1124人足りず、現在の1・15倍が必要と判明しました。

全体(不足数約2万4000人)でみても、都市部さえ充足しておらず、医師不足が深刻な実態が改めて裏付けられた。

診療科別、必要医師数の現在医師数に対する倍率

診療科別、必要医師数の現在医師数に対する倍率
現在医師数 倍率 現在医師数 倍率
内科 27558 1.14 消化器外科 3046 1.09
呼吸器科  4002 1.20 泌尿器科  4790 1.13
循環器科  8261 1.13 肛門外科  228  1.09
消化器科  7690 1.14 脳神経外科  5754  1.17
腎臓内科  2155  1.20 整形外科 12373  1.16
神経内科  3528 1.20 形成外科  1780  1.07
糖尿病内科  1898  1.18 美容外科    59  1.08
血液内科  1709 1.15 眼科  4621  1.14
皮膚科  3347 1.10 耳鼻いんこう科  3601 1.15
アレルギー科  258  1.09 小児外科  726  1.08
リウマチ科 608  1.16 産婦人科  7450  1.18
感染症内科  260 1.13 産科  452  1.24
小児科  8537 1.16 婦人科  1084 1.12
精神科 10843  1.11 リハビリ科  1750 1.29
心療内科  341 1.20 放射線科  5101 1.12
外科 15202  1.09 麻酔科 7421 1.16
呼吸器外科 1408 1.14 病理診断科  1283  1.20
循環器外科  1986 1.12 臨床検査科  676  1.09
乳腺外科 714 1.14 救急科  2610 1.28
気管食道外科  105  1.10 全体  1829 1.12

医師の足りない診療科は、リハビリ科、救急科、産科、ついで呼吸器科、腎臓内科、神経内科、心療内科、病理診断科などとなっています。

県別、必要医師数の現在医師数に対する倍率

県別、必要医師数の現在医師数に対する倍率
現在医師数   倍率 現在医師数   倍率
北海道 7567  1.13 滋賀 1892  1.22
青森 1520 1.32 京都 4260  1.12
岩手 1600  1.40 大阪 13008  1.09
宮城 2408  1.15 兵庫 7393  1.13
秋田 1482  1.20 奈良 2115  1.16
山形 1513  1.24 和歌山 1812  1.15
福島 2397  1.23 鳥取 1037  1.19
茨城 3292  1.15  島根 1133  1.28
栃木 2836  1.17 岡山 3358  1.12
群馬 2490  1.19 広島 3971  1.15
埼玉 6757  1.10 山口 2132  1.14
千葉 6812  1.12 徳島 1268  1.22
東京 20161  1.08 香川 1637  1.19
神奈川 7527  1.10 愛媛 2128  1.17
新潟 2698  1.22 高知 1501  1.24
山梨 1047  1.29 福岡 7976  1.11
長野 2718  1.18 佐賀 1378  1.12
富山 1736  1.17 長崎 1944  1.12
石川 2119  1.11 熊本 2839  1.13
岐阜 2314  1.24 大分 1812  1.26
静岡 4149  1.21 宮崎 1566  1.18
愛知 8267  1.11 鹿児島 2483  1.21
三重 1982  1.20 沖縄 1776  1.18
福井 1233  1.18  

都道府県別の医師不足を見ると、岩手県、青森県、山梨県、島根県、大分県、山形県、高知県、岐阜県などがたくさんの医師を必要としています。

岩手県立宮古病院
50人いた常勤医師が26人に減っているそうです。循環器科の医師がいなくなり、平成19年度は以前より救急搬送の患者さんが約6倍も増えたそうです。遠い町までの搬送は、患者さんにとっても、救急隊員にとっても大変です。
島根大学
島根大学・医学部では、医学生100人中20人を地域枠の入学としています。卒業してからも、地域で活躍してくれる医師を育成するためですが、時間がかかりそうです。

小説「ノーフォールト」岡井崇著、TV「ギネ」の原作本

「このままでは、日本の医療は崩壊する」という本の帯の言葉が何だか身近に感じられて怖い現状です。著者の岡井崇さんは現役の産科産婦人科の教授をされています。日常の診療の中で感じられたことを小説で言い表しておられます。

主人公産科医奈智は、出産に立ち会った時に母親が亡くなりました。懸命な処置をしたにもかかわらず亡くなったのです。その後家族に訴訟を起こされ、精神的に追い詰められたのです。産科勤務の過酷な状況を書いています。出産時に母親の病気が隠れていて死にいたることもあります。生死を分ける判断を瞬時に下すという精神的緊張の連続の中で、患者の命を守るために頑張っている多くの医師の様子を目の当たりにできるというテレビドラマ「ギネ」をこれからも見たいと思います。

国による無過失補償制度という物がなければ、医療事故が発生した場合に、病院が過失を認めない場合は、患者は補償を受けられません。こういう状況が医療訴訟を増やし、医師と患者の信頼を損なっています。そして、訴訟の少ない診療科を若い医師達が選択している傾向にもなっているようです。

2009年から、産科医療保障制度がスタートしたようですが、この本の著者岡井医師の厚労省への報告書がきっかけとなったそうです。

少子化対策と声高に言われていますが、地方では産科が閉鎖されている状況です。勤務医に給与をあつくするという方針が今打ち出されていますが、賛成です。開業医の先生との連携をとって、どちらも同じくらいの仕事量になるように改革が必要だと思います。そして、無過失補償制度を導入して医師達が安心して患者の命に向き合えるようにして欲しいものです。

今のような綱渡りの現状では、私たちも安心して命を預けられないのではと思います。勤務医の心身ともにぎりぎりの状態を何とかして欲しいと思います。2009.11

現在の専門医制度の問題点

現在の専門医制度は、各診療科の学会が独自に認定しているそうです。選考基準、定数もいろいろだそうです。これが、産科、小児科、外科系などの激務の診療科での医師が不足する原因にもなっているようです。

厚労省研究班の具体策

専門医の定数を定め、計画的に養成するための第三機関の設立です。研究班は、専門病院や学会、医学部、開業医、自治体らで組織する「卒後医学教育認定機構(仮称)」の設立を提言しています。

地域ごとに、患者数に応じた適正な数の専門医が養成されるように、研修病院に対し定員枠の策定を求めます。

欧米の医師養成の仕組み

英国では、政府による医学部定員の規制、各専門科の医師数の規制、専門医数の規制を行う機関がある、患者数などを踏まえて養成すべき専門医数を変更している、政府による開業医数の規制など一番厳しく規制しています。

ドイツは、英国に比べて政府による医学部定員の規制の規制だけはありません。後は同じく規制しています。

フランスは、英国と比べて政府による開業医数の規制だけはありません。後は同じく規制しています。

米国は、規制しているのは、専門医数の規制を行う機関がある、患者数などを踏まえて養成すべき専門医数を変更しているの2つです。後の規制はありません。

日本は、政府による医学部定員の規制のみ規制しているだけです。

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更新日:2020/03/15