林崎良英さんの遺伝子研究
林崎良英(54歳)さんは、人間の遺伝子を読み取り、病気の予防や治療に役立てようと研究に力を注いでおられます。2011年1月、テレビ番組「夢の扉」で紹介していました。
林崎良英(54歳)さんの遺伝子研究とは
林崎良英(54歳)さんは、大阪大学医学部大学院を卒業、内科系を終了した医学博士です。子供の頃に入院したことで、医師になろうと思われたそうです。しかし、医師になってみると、原因不明の病気が多く病気を完治させることができず、病気にならない方法を目指しているうちに遺伝子の研究の方へ進まれました。
1990年、米国はヒトゲノム計画で4000億円の予算をつけました。林崎先生は米の予算の30分の1の予算で頑張りました。そして、RNAに注目、RNAは壊れやすく完全な読み取りは成功していませんでした。半年後に林崎先生は、読み取る技術を完成し、そのデーターベースを公開しました。
ips細胞の研究で有名な山中伸弥教授も、このデーターベースのおかげで20~30倍の時間短縮になったと喜ばれていました。林崎先生は、基礎データーなので、人類共通の財産なので公開したと言われています。
1992年から理化学研究所に入られました。ゲノム科学研究室、遺伝子構造・機能研究グループなどを経て、理化学研究所オミックス基盤研究領域領域長として活躍されています。
林崎良英(54歳)さんは2007年に、「高等生物の大規模遺伝子楽天 解析とライフサイエンスの国際標準プラットフォームの開発」の業績により紫綬褒章を受章されました。
林崎良英(54歳)さんは2010年に、「RNA大陸の発見」の業績により、日本遺伝学会木原賞と、「高等生物の全トランスクリプトーム解析によるRNA大陸の発見と医療データ基盤の構築」の業績により、持田記念学術賞をW受賞されています。
遺伝子とは
遺伝子(Gene=ジ−ン)は、生物のいろいろな遺伝性質を決める因子のことです。DNAや染色体のような物体ではなく情報や情報の単位のことです。
DNAが発見される前からある言葉です。生物学では最近まで、遺伝子の定義は、タンパク質を規定する情報とされ、ヒトの遺伝子は約22,000個だといわれてきました。DNA→RNA→タンパク質→生体という考え方で、DNA上ではタンパク質をコードする部分を遺伝子とし、コードしない部分は不要な部分としてジャンクDNAだとしてきました。
RNAに注目
独立行政法人理化学研究所の林﨑良英プロジェクトディレクターを中心としたFANTOMの発見によって、ジャンクDNAとされていた部分からもRNAに数多く転写(Transcription)されていることがわかってきました。
このタンパク質をコードしないRNA(ノンコーディングRNA=ncRNA)は、遺伝子発現制御、細胞周期、細胞死などの生命現象に関与していると考えられています。その数は全RNAの過半数を占めており、ncRNAの方がメジャーだということがわかってきました。
DNAとは
DNAは、デオキシリボ核酸(Doexyribo Nucleic Acid)という物質のことです。
DNAは右巻きの「2重らせん構造」が特徴で、そのらせん部分には、橋渡しするように2つの塩基が結合しています。
DNAの塩基は、アデニン、シトシン、グアニン、チミン(略してA、C、G、T)の4種類で、2重らせんをつなぐとき「AとT」「GとC」が必ずこのセットで結合しています。このセットを塩基対(base pair)といい、ヒトの塩基対は約30億個あります。
塩基の並びは塩基配列といい、これが遺伝情報・生命の設計図となります。
染色体とは
染色体(Chromosome)は、DNAがいろんなタンパク質と結びついて複雑に折りたたまれた状態の物体です。
染色体は細胞の核の中にありますが、普段は見えません。細胞分裂時に、DNAがヒストンなどのタンパク質に巻き付いて折りたたまれ、初めて顕微鏡で見ることができるようになるようです。
ヒトの染色体は46本で、そのうち44本は常染色体で2本ずつ同じ種類のものが入っています(22本×2)。残りの2本は性染色体で、男性はXY、女性はXXです。
DNAシーケンサーを使って研究
オミックス基盤研究領域で研究されている林崎良英さんは、遺伝子ライブラリーを持っています。DNAは、1本の長さが8mもあるそうです。それを500万個を-80度で冷凍保存しています。それが、遺伝子ライブラリーです。
このDNAをDNAシーケンサーを使って、遺伝子を読み取り塩基配列を調べるそうです。1997年から使い始め、世界で一番容量が大きかったそうです。プレートにおいたDNAがガラス管を通って上に上がり、上部のレーザーで読み取るしくみだそうです。
遺伝子の違いを解明し、治療に結びつける
DNAには、4つの塩基(アデニン、シトシン、グアニン、チミン)が30億個あり、その情報量は新聞に置き換えてみると200年分にもなります。
そして、この4つの配列の違いが個性となります。1個の違いで、体質や性質が変わってくるそうです。
遺伝子の違いが、治療にも大きくかかわって来ます。どんな薬がよく効くか、個々人で違うからです。
新型インフルエンザとの戦い
新型インフルエンザには、A型とB型があります。A型には、香港型、ソ連型、新型があります。B型には、山形系統、ビクトリア系統があります。
新型インフルエンザが2009年には大流行しましたが、新型インフルエンザと診断するには、6時間以上かかりました。早急に新型インフルエンザと診断し、タミフルやリレンザを投与することが必要です。
そのためにも、新型インフルエンザの確定診断わ早くする検査法が必要でした。そこで、林崎良英さんは検査キットの開発をされました。ウイルスは、膜に包まれた中に遺伝子が詰まっているそうです。この遺伝子を読み取るのです。
新型インフルエンザ検査キット
この新型インフルエンザ検査キットの使い方は、以下の通りです。
- 綿棒で鼻の粘膜に付いたウイルスを取ります。
- ウイルスの膜を壊す液体に入れ、遺伝子を取り出します。
- 試薬を入れて温めます。30分後に、陽性の場合には蛍光色に光ります。これで、新型インフルエンザと診断できます。
この新型インフルエンザ検査キットは、2010年11月、正式に認可されました。
しかし、新型インフルエンザは、いつ突然変異を起こすかわかりません。現にタミフルが効かない新型インフルエンザが増えてきています。
ウイルスの変異との戦いになりそうでが、人類のためによろしくお願いします。
これからの研究として、1滴の血液から遺伝子を読み取り、肺がんのリスクを測るなどの方法をさぐっていきたいと言われています。
2020年までには、何処でも、誰でも、遺伝子検査を受けられ、健康に役立てられるようにしていきたいとも言われています。