医師不足
2009年度の医学部定員8486人に文部科学省が発表
2008年11月5日の読売新聞によると、文部科学省は来年度の国公私立大学医学部の入学定員を今春より、693人増やし、8486人にすると発表した。
医師不足に対応するもので、ピークの1981年~1984年の8280人を約200人上回り過去最高になるそうです。
各大学では、増員を機に医師不足の地域に集中的に人材を送り出す方策として、地元入学枠や奨学金の新設を検討しているという。
入学定員を増やすのは、医学部を置く全国79大学のうち77大学で、国立42大学(363人)、公立8大学(59人)、市立27大学(271人)。10人前後の増員がほとんどで、最も多く増員するのは、順天堂大と岩手医科大の20人だった。
医師不足対策として、ほとんどの大学から、小児科や産科の講義を手厚くする方針や、入学試験への地元枠導入プランが報告された。
北海道の旭川医科大学は、関連の病院で高校生ボランティアを受け入れ、その経験者に受験してもらう入学試験を2010年度にも実施することを計画しているそうです。
地方の公立病院が研修医の呼び込み作戦?
深刻化する医師不足の中で、全国の病院は医師の卵である臨床研修医にも「即戦力」としての期待を込める。都市部の大学病院などに集中しがちな研修医の目を引きつけようと、地方の公立病院は1000万円近い年収を保証したり、海外短期留学の制度をアピールしたり、知恵を凝らして人材誘致を図っている。
青森県八戸市立市民病院は、「食堂にウニご飯」「ホテルなら5つ星」「給料」は45万円
福井県市立敦賀病院「固定給を1.5倍、ボーナスも倍増させた」宿直手当などを含め月給は約55万円で、年2回のボーナスは88万~138万円。年収は最高で940万円にのぼる。
富山県黒部市民病院は「米国への短期留学制度」研修2年目に米国の病院で4週間、最先端の医療を学べる。旅費など約60万円はすべて病院負担で、これまで10人以上が参加したという。救急患者が年間約2万人の同病院は「毎日が修羅場の現場にとって、研修医確保は死活問題といっていい。今後も独自の誘致作戦で研修医に魅力をアピールしたい」としている。
2008.6.29 読売新聞から
医師不足は深刻、公立93病院が入院休止
読売新聞の全国調査で、公立病院のうち2004年以降に少なくとも93病院の141診療科が、医師不足などを理由に入院の受け入れ休止に追い込まれていたことがわかった。
さらに49の公立病院が経営悪化などで廃院したり、診療所への転換、民間への移譲など運営形態を変えたりしたことも判明した。
地方自治体が設置する病院は全国に約1000あり、調査は都道府県を対象に、医師不足の契機になったとされる新医師臨床研修制度が導入された2004年度以降について実施された。
入院を休止したことのある病院の診療科別では、産婦人科・産科の休止が44病院、次いで小児科の19病院。両科は、訴訟のリスク、不規則な勤務などで全国的に医師が不足しているといわれており、公立病院でもその傾向が表れた。2008.4.6 読売新聞から
少子化問題対策とか政府は言っているが、こんなお粗末な産科・小児科の医療体制で、「こどもをたくさん産んで欲しい」と、よく言えますね。
妊産婦が定期健診に行かず、飛び込み出産をしようとして救急車の乗り込み、たくさんの病院から断られる、というケースも多々あると聞く。定期健診を無料にし、安心してこどもが生めるようにして欲しい。そして、ゆとりある医療の中で安心して診療が受けられるように、産科・小児科のの待遇を改善して産科・小児科になりたいという医師が増えるようにしい欲しい。
過疎地域の人たちは、ますます遠くの病院まで足を運ばなくてはならなくなる。高齢になリ自分で運転できなくなる人が増えている今、病院通いは大変である。医療格差も如実に表れてきていると感じる。
岡山県病院協会、女性医師の復職を支援
結婚や子育てなどを機に離職した女性医師の復職を促そうと、岡山県病院協会は、女性医師限定の求人情報をインターネット上で公開した。求人のある病院名などを一覧表示し、就職活動を手助ける。
全国的な勤務医不足に対応するのが狙いで、県レベルで女性医師の求人情報を公開するのは珍しいという。
厚生労働省によると、県内の医療機関で働く女性医師の数は2006年現在、820人で、10年前の1.5倍。だが、育児休業が取りにくかったり、過酷な勤務のために離職に追い込まれている人も多いという。
復職に当たっても、子育てのためにフルタイムで働けなかったり、ブランクがあるなど負い目を漢字勝ちとされる。
同協会は、「女性限定の求人ならば抵抗は少ないはず」「受け皿となる地域の病院が、女性医師にとって働き易い環境を整える意識付けにもなれば」土井章弘会長は期待している。2008.4.6 山陽新聞から
兵庫県、医師不足対策(麻酔科・産科医に歩合制手当を)
兵庫県は、2008年4月から医師不足を改善するために、県立病院の麻酔科医と産科医に歩合制の診療手当を支給することに決めた。麻酔件数、危険度の高い妊婦の担当人数に応じて支給し、医師の年収を100万から300万円程度引き上げるという。
麻酔科医が全身麻酔を行なった場合、その時間に応じて1900~6800円を支給。
産科医は、切迫流産の危険性があるなどリスクの高い入院妊産婦を担当した場合、1人につき1日1300円を支給。休日に出産を介助した場合にも、従来の超過勤務手当とは別に1件1万円を支払う。
このほか、40歳前後の中堅時代から減額される初任給調整手当も10年間据え置きに改め、最高で年収約100万円の増額となる。また、診断書や紹介状の作成などが医師の負担になっていることから、災害医療センターを除く11の県立病院に医療秘書計37人を配置する。
兵庫県病院局は、姫路循環器病センターが麻酔科医不足のため脳外科の深夜の救急対応ができなくなるなど、12の県立病院は医師不足が深刻で、この歩合制の導入で待遇充実をはかり、医師の公立病院離れを食い止めたいとしている。
2008.3.27 読売新聞より
研修医自殺は過労
「研修医自殺 過労と認定」という記事が新聞に出ていた。
1998年に関西医大の研修医が過労死楽天
2000年に横浜市大の研修医が過労自殺
こうしたことが二度とおきないように、2004年新しく臨床研修制度を導入していた。が、また起きてしまった。
2006年4月、日本大学医学部付属病院の女性研修医26歳は、過労自殺した。1週間72.8時間労働で夜間休日の当直が月10回(多いとき)、1年間で77回だったと言う。
なんとかならなかったのか。貴重な人材を亡くしてしまった。
今の日本は小児科医と産婦人科医の希望者が少なくて、僻地では診療科が無くなってきている。昼夜を問わずの過酷な勤務に、新人医師達もこの科を避けているそうだ。産科は、出産時の事故による訴訟を起こされることも多く、よけいに希望者が少なくなっているとか。
僻地医療にも多くの問題点がある。大学病院から医師を派遣してもらってやっと診療できている状態だ。若い医師が2~3年交代で診療しているところもある。設備も整っていないし。
人口が減ることに伴って、医療格差もどんどんと広がっていると感じる今日この頃である。
医師の絶対数が不足
済生会栗橋病院副院長・医療制度研究会代表理事 本田宏氏 2007.7.21読売新聞
2007.7.29日の参院選で医療問題について、見極めるポイントを話されていた。
日本の医師は、約26万人で、医師の絶対数が不足している。人口10万人あたり200人で、OECD(経済協力開発機構)加盟国平均の290人を大きく下回っている。OECD並みにしようとすれば、あと12万人必要となる。
この290人を上回る医師がいる都道府県はない。その結果、泊まり勤務明けも引き続き病院に残って手術し、連続36時間勤務といった過酷な状況に置かれてしまっている。
こうした状況から逃れようとする医師が増え、病院の勤務医が、ますます不足している。大都市でも基幹病院の集中治療室(ICU)から医師が一斉に退職したり、公立病院の内科や小児科などが閉鎖に追い込まれたりしている。
「医療崩壊」とも言える状況を打開し、安心して医療を受けられるようにするには、思い切った医学部定員の拡大と医療費抑制策の転換が必要だ。その結果、医療スタッフ増員の効果も生まれ、雇用問題にも好影響を与えることになる。
各政党とも医療問題に目を向け始め、様々な政策を打ち出している。内容を吟味した上で一票を投じてほしい。
大学病院産婦人科医、当直後翌日夜まで勤務は9割
日本産婦人科学会の調査で、大学病院産婦人科の約9割で、医師が当直翌日も夕方から夜間にかけて勤務しているほか、当直時に緊急入院などに対応した際の手当てを支給されていないことがわかった。
産科医療は過酷な勤務体制などを背景に医師不足が深刻化しており、日本産婦人科学会は「人材確保には待遇改善が不可欠」として厚生労働省に改善策を求める陳情書を提出した。
当直翌日の早期帰宅など勤務の緩和措置を実施しているのは新潟大学や富山大学、昭和大学など7病院にとどまっている。検討中が福岡大学などの8病院。
当直手当以外に、緊急入院や手術に対応した際の手当てが支給されない病院が83病院。通常勤務時の分娩手当てについては、1回当たり2万円を支給している三重大など9病院が導入。神戸大など2病院が時間外分娩に対してのみ支給しているが、79病院では全く支給されていなかった。
日本産婦人科学会が全国110大学病院と関連病院を対象に実施した調査では、産婦人科の勤務医は2003年の5151人から2005年には4739人に減少。出産を扱う関連病院は1009から914に減った。読売新聞、2007.8.6付け記事から抜粋
横浜市立大、謝礼問題の内部通報の医師
専門外の診療科へ配転に
2008年5月11日の読売新聞に、横浜市立大学医学部の学位取得を巡る謝礼授受問題で、同大コンプライアンス(法令順守)推進委員会に内部通報した医師が、神奈川県内にある病院の専門外の診療科に4月1日付けで異動していたことがわかった。
読売新聞の取材に対し、その医師は2007年11月、嶋田紘教授(64)(2008年3月末で医学部長を退任)の研究室で「学位を取得した大学院生らとの間で現金の授受が行なわれている」と推進委員会に自ら通報したことを明らかにした。
その医師は、1月に移動の内示を受け、「配置転換させられそうだ」と推進委員会に保護を求めた。
研究も途中だった。推進委員会は訴えに何も対応してくれなかった。と、言う。
大学の規定は、法令・倫理に反する行為に関して内部通報した者が不利益を受けないよう、保護を義務付けている。
推進委員会のメンバーの岡田公夫副学長は「通報者の保護は規定に沿って努力した。結果的に守れたかどうかは明らかにできない」と話している。
横浜市大事務局は「通報者が誰か分からないのに保護できない。人事を止めたら、逆に(通報者)が分かってしまう」としている。
以上のような記事の内容だった。
そもそも、横浜市立大学医学部コンプライアンス(法令順守)推進委員会の力が弱すぎるのでは?
「白い巨塔」は、まだまだ生きていると感じた記事であった。
長いものには巻かれろという、どろどろとした雰囲気を感じた記事であった。
そして、日本の大学病院には、表面に出てこないこのような大学が多々あると感じるのは私だけではないと思う。
ネットで中傷、共感力欠如の医師もいる
読売新聞、2007年8月3日の「論点」で、南淵明宏(なぶちあきひろ)心臓外科医(大和成和病院長)は、医師専用の会員制ホームページでも、匿名で他人を中傷する書き込みがあること、こうした医師が数多くいるという現実は、医療が内部から崩壊していることを物語っているのではないかと、問題を投げかけている。
- 医師の質を向上させるために、専門医制度が設けられたが、個々の医師間に厳然と存在する資質の格差を一切問わないできた。医師不足がとりざたされているが、数さえふやせばいいわけではない。
- 世界医師会は「医の倫理マニュアル」で、医療の中核となる資質について、共感力、能力、自律を挙げている。特に医療現場では、共感力がなければ話にならない。「相手は一体どう感じるだろう」と患者に共感しようとする姿勢は、医療の原点だ。
- 倫理観は人に押し付けられるものではない。信念に基づき、正々堂々と人生を突き進むところに自然とわき上がってくるものだ。それをどう育成するかが重要だ。
- 医療専用ホームページの書き込みが物語る、医療の根幹に潜む医師の心の荒廃に眼を向けるべきだ。医療事故や、犯罪などを行なった医師について、厚生労働省の医道審議会が行政処分を審議するが、こうした現状についても討議し、抜本的な対策を講じるべきだ。それが、医療再生への近道となるだろう。
若手医師の育成に「マグネット(人を惹きつける)ホスピタル」の実現を
2007.8.30日 読売新聞の「論点」で、伊藤恒敏(いとうつねとし)東北大学地域医療教育開発センター長による、「医師の育成、核となる病院を地域に」によると、医師不足対策として、まず、OECD加盟国平均医師数の、人口10万人あたり約300人まで増やすことと、地方に医師を惹きつけるために、地域で医師を長期に育成する視点が大事で、中規模病院(マグネット ホスピタル)と呼び実現させることが必要としている。
- 2004年に始まった新しい臨床研修制度で、研修医の行動が一変し、大学病院から市中病院へと移った。その結果、大学では必要な医師を十分確保できなくなった。地方では、産科、小児科だけでなく、内科、外科医不足、診療中止に追い込まれた病院もある。
- 医師不足楽天 は、新制度が始まる前から起きていた。「医師名義貸し事件」である。深刻なの医師不足の実態を国が放置していたことが、今日の医療崩壊拡大の原因の一つと言えよう。
- 来年4月から始まる、青森、岩手などの医師不足10県の大学医学部定員増や、5月に発表された政府・与党の医師不足対策・医師定員増は、付け焼刃的で、合理性や一貫性はない。
- 医師が適正な労働時間である週40時間を順守しようとすると約10万人も不足する。医療崩壊に歯止めをかけるには、OECD加盟国平均医師数の、人口10万人あたり約300人まで増やすことが必要。
- 医師不足が深刻なのは、病床数100~300の中規模病院が多い。人口20万人程度の医師不足の医療圏に、中規模病院を再編して、500床前後の教育環境が整った病院を整備することが必要。この規模なら、若手医師の症例経験が十分に積める。こうした病院を「マグネット(人を惹きつける)ホスピタル」と呼び、実現を模索している。