トンレサップ湖での水上生活
カンボジアのトンレサップ湖は、琵琶湖の18倍という広さでひょうたん型をしています。雨季には乾季の8倍の大きさになるようです。
トンレサップ湖で水上生活をしている人は100万人もいるそうです。どんな生活なのでしょうか。
トンレサップ湖とは
トンレサップ湖は、カンボジアにあり、シェムリアップから車で約30分の所です。旅人の金子貴俊さんは、アンコールワット近くの国際空港から車で1時間で、トンレサップ湖のほとりに到着したようです。
琵琶湖の18倍という広さで「カンボジアの心臓」とも呼ばれ、ひょうたん型をしています。東南アジア最大の湖で、クメール語で巨大な淡水湖と川という意味があるそうです。
一年のうちほとんどの期間は、水深約1mで、面積は2700平方kmしかないため、プノンペンとシェムリアップを結ぶ定期船が暗礁に乗り上げるそうです。しかし、夏季のモンスーンの時期には湖からプノンペン付近でメコン川に流れ込むトンレサップ川が逆流し、そのため周囲の土地と森は水没、トンレサップ湖は面積を1万6000平方kmまで広げ、水深も約9mと深さを増します。
トンレサップ湖には有機物が豊富に流れて来るため大量のプランクトンが発生し、魚もたくさん生息します。体重100kgを上回るメコンオオナマズやフグなど600種以上の淡水魚がいるようです。トンレサップ水系で採れる魚は、カンボジア人のたんぱく質摂取量の60%を占めると言います。
トンレサップ湖には、世界最大の水上生活者がいて、1ブロック1万人、100ブロック以上で約100万人が暮らしているそうです。
気候は
朝は肌寒くて、長袖が手放せないぐらいですが、昼間は27~28度まで気温が上がり帽子とサングラスが手放せないそうです。一日の気温差が大きく、体調管理が難しいようです。
トンレサップ湖での水上生活
トンレサップ湖には、浸水林(しんすいりん)と呼ばれる木が生えています。高さ10mにもなり、葉が水の上に出ています。この木は水に浸かっていても枯れませんし、この木のお陰で水上生活が安全で、豊かなものになっています。
移動手段は船ですが、手漕ぎの舟、エンジンのついた船、タライ舟と用途に応じて様々です。
トンレサップ湖は、メコン川とつながっていて、雨季は5月~10月となります。雨季は、トンレサップ湖が8倍にも大きくなります。
家は
家は、トンレサップに浮かんでいます。水深6mの所だそうです。陸地から20km離れた場所に水上生活をしている人の集落がありました。
家は、浸水林に繋がれていて、家が流されないように工夫されています。
家は、竹を150本ほどを使って作られています。少しずつ束にしてつなぎ、床を作っていきます。電気は、バッテリーを使います。レンタル屋さんもあるようで、訪問者の金子さんも借りていました。1週間に1度配達しているそうです。
夕暮れ時、家のベランダで涼んでいると、隣の家の様子がよくわかります。家は、ベランダを内側に向けて配置しているので、隣同士のベランダで話ができます。
仕事は
散髪屋さん、交番、ガソリンスタンドなどがボートから見えるようです。カラオケ屋さんもあります。水上結婚式場もあります。たくさんの人が暮らしているのですから、一応必要とされるものはあります。
豚を飼っている人もいます。豚を飼っている人は、水の上でずっと育ってきたから不自由とは思わないと言います。そして、今はビデオを見るだけだけれど、次に豚が売れたらアンテナを買ってテレビを見たいとも言っていました。
魚をとって生簀(いけす)に飼っている人もいます。アンコール遺跡にもトンレサップの漁師や魚が描かれているそうです。昔から漁をして暮らしてきたのですね。魚の塩辛を作って保存するようです。
買い物は
水上デパートと言えるような店があります。衣類、携帯電話、DVDプレーヤー、化粧品など何でもあります。売れ筋商品は、子供用のライフジャケット楽天 だそうで、1ヶ月に30着売れるそうです。
子ども達は、水上生活をするために、まず泳ぎを覚えないといけません。そこで、ライフジャケットを着て湖に飛び込み徐々に泳ぎを覚えていくようです。4歳から練習します。泳げないと小学校へ行けないと言います。
まず、犬かきを覚え、それから平泳ぎを覚えるそうです。
小学校は
朝7時、手漕ぎ舟で学校へ行きます。授業は午前と午後に分けて行われます。みんな集まると学校が沈むからです。
授業を受ける子どもたちは、まっすぐに先生をみつめその目は、輝いています。みんな「勉強がしたくて」学校に来ているから、やる気がすごいようです。日本の子どもたちも見習って欲しいですね。
その時に、大事件が起きました。子どもの通学用の舟が沈没しかけたのです。子どもたちが協力して水をかき出していました。先生は手を出さずに見ていました。
水上生活であるための共同生活とは
水上生活について100人に聞いたら、以下の答えが多かったそうです。
- 船さえあれば、どこにでも遊びにいける。デコボコがない。
- 土地のもめごとがない。
- 生まれてからずっと、水の上なので、陸へ行くと安心して寝られない。
引越し
乾季になるとトンレサップ湖の水が減ってくるので、引越しをしなくてはなりません。小学校も引越しをします。それに連れて、小学生のいる家も引越しをします。
5日後には100軒を超える水上集落が新たにできました。好きな所に住んで良いので、お隣さんはいつも別人となるようです。
いけすも移動、モーターボートで家ごと引越しですから、我々の引越しと違って簡単ですね。
深すぎる場所は、木がないから、風や水で流されるので危ないです。浸水林のある場所に引越しをします。浸水林は、家の漂流防止となり、家を風や日差しから守ります。また、浸水林は絶好の漁場となり、小魚はこの木の間を棲み家としています。
隣りが子だくさんだとわかり、得意のニンニクスープを差し入れして、引越しのご挨拶をしている主婦もいました。そして、皆で踊りだしたり、歌い出したりして、新しい集落を楽しんでいました。
家の修復を手伝う
ある男性は、家が沈みかけていて困っていました。修復の材料である竹を買うお金がないのです。漁の道具を役所に没収されていました。禁猟区で漁をしたと疑われたからです。
お金のない時の最後の手段としては、トンレサップ湖に生えているアシの一種を使うのです。1000本も取らなければなりません。ところが、根が深くて1本取るのも大変です。
「もっと早く抜ける場所がある。手伝ってやる」と、声をかけてくれた人がいます。「自分も手伝ってもらったことがあるんだ」と、言います。
同じ水の上に住む者同士、助けあえば明日を生きる活力となると、言います。
漁の道具を没収された男性は、お隣さんが漁の道具も貸してくれました。感謝しながら、今度は自分が助ける番だと言いました。
困った人を見たら、自分にできることで手を差し伸べる、それを見て、みんなトンレサップ湖で生きる兄弟なのだと思いました。