貴州省・トン族
「地球イチバン」という番組で、中国南部の貴州省(きしゅうしょう)を取材していました。この貴州省は、地球で一番広い杉の森があるそうです。この杉林は7万km2もあり、北海道と同じ広さというから驚きです。
その山深い場所で、杉を育てながら杉とともに力強く生きているトン族なども紹介されました。ボクシング元世界チャンピオンの内藤大助さんがこの村を訪問していました。
貴州省はどこにある
上海から貴州省の中心部まで直線距離で、約1500kmあります。上海から西南西の方向になります。
香港からは貴州省の中心部まで直線距離で、北西の方向に約800kmの場所になります。
貴州省の北には重慶という都市があり、西には昆明という都市があり、東には桂林があります。貴州省は、ほとんどが杉林なので普通の日本人が知っているような有名な都市はありません。
銀潭村(ぎんたんそん)の生活
従江(じゅうこう)の町から、ガタガタ道を車は走って行きます。杉の森、全部が杉の木だそうです。この杉林は7万km2もあり、北海道と同じ広さというから驚きです。
途中の村の様子は日本の田舎を思わせる風景だったそうです。山があって、家がぽつり、田畑と細い道、テレビに映る風景はそのように見えました。
銀潭村(ぎんたんそん)の入り口では、歓迎の儀式が待っていました。
トン族の娘たちが、黒い服、頭に花飾り胸元には何連もの首飾りをつけて美しく着飾り待っていました。そして、娘がお酒をついでくれました。飲むと、50度の アルコール楽天 度とかで、さすがの内藤大助さんキツそうにしていました。これが、歓迎の儀式です。
千鳥足の内藤さんを、両側から、トン族の娘さんが支えてくれていました。両手に花で、内藤さんも嬉しそうでした。
鼓楼(ころう)には、杉の神様が宿る
銀潭村には、美しい鼓楼(ころう)がありました。鼓楼(ころう)は、高さ20mで、13層の屋根で作られています。凝った飾りのついた美しい塔です。もちろん、材料は全て杉です。杉の高層建築ですが、釘は使われていません。
鼓楼は、同じ姓を持つ一族のためのもので、呉一族の鼓楼、潘一族の鼓楼というように、一つの村に一つあるそうです。この鼓楼(ころう)では、長老会議が行われ村の大事なことが決められます。家を建てること、葬式、結婚式などが決められます。
取材時には、「隣の村には強い牛がいるから、闘牛をしよう」という話が出ていたようです。トン族は闘牛が大好きだそうです。そして、闘牛は、村同士の大事なイベントとなります。しかし、今トン族には牛がいません。これから、お金を集めて、誰が牛を飼うかなどを決めるようです。
闘牛は、田植え前と収穫後に村対抗で行われます。闘牛の最後は「牛追い祭り」になり、勝った牛は「英雄」に、負けた牛は「食用」になるようです。
そして、鼓楼(ころう)には、大事な役割があります。鼓楼(ころう)には、杉の神様が宿り村を守ってくれると信じています。だから、鼓楼(ころう)は、杉を表しているのです。
また、鼓楼で男性が恋歌を歌って、女性をくどくこともあるそうです。牛たい琴という楽器を使っていました。トン族は、漢民族に追われこの森に来たと言われます。
小さな丘には、大きな杉の木があります。樹齢300年のご神木です。線香、お酒を奉ってひ孫の8歳の誕生日を報告に来ていました。村人の生活の折々に、このご神木に祈りをささげに来るようです。
この村は空気がきれいだから、杉の木は多くても花粉症の人はいないそうです。
杉を上手に使う
銀潭村には、雑貨屋が2軒あるだけです。そこで、トン族の人たちは、身近にある杉を使って何でも作り出します。
- お棺
- トン族の人は、60歳になったら、お棺用の寿の木を用意します。大きな杉の木を切り倒しておきます。この木をくりぬいて遺体を収め、土葬します。早めにお棺を用意することで、かえって長生きするそうです。
- 家を建てる
- 杉を使って家を建てます。子どもが生まれた頃から杉の木を植えて、その子が結婚して家を建てる頃にその杉を切り倒して家を建てるそうです。杉の木を切った後には、必ず杉の苗を子孫のために植えるようです。杉で作った家は、通気性が良いそうです。家族が増える度に2階、3階と建て増しし、少しずつ床面積を広くしていきます。
- 米の蒸し器
- 杉の木で、米の蒸し器も作っています。良い香りがご飯につくようです。この日のおかずは、雀の丸揚げで、頭から丸かじりするようです。他には野菜炒めのようなものです。
- シーソー
- 子どもの遊び道具、シーソーも杉の木で作ります。
- 湿布
- お医者さんが、杉の葉をすりつぶして、湿布を作っていました。骨折した時にこの湿布を使うそうです。4日で歩けるようになるとか言っていました。
- 薬
- お医者さんが、杉の葉を1ヶ月に1回食べると血圧が下がると言っていました。
トン族の民族衣装の工夫
トン族の民族衣装には、独特の工夫が施されています。服には光沢があり、防水効果もあります。
その工夫とは、服に卵の白身を塗って乾燥させることです。
貴州省は「天に三日の晴れ間なく、地に三里の平地なし」と言われる地域で雨も多いようです。実用的なトン族の民族衣装は、みんなが普通に着ているそうです。
消防訓練
杉、杉、杉の村は、家事が起きたら一大事です。建物など全てを失ってしまいます。そこで、消防訓練が大切ななってきます。
毎週、消防訓練を行っています。防火用水も作り、万全を期しています。穀物倉庫は住宅から離して建て、さらに下に水を張っておくようです。学校では校長先生が「防火第一」を生徒たちに教えています。
さい(寒いという字の下のはらいを取って木を書く)南村(さいなんむら)の鼓楼作り
さい南村では、鼓楼を作り中です。築110年の鼓楼がありましたが、古いので立て替えることになりました。一度建てたら200年はもつそうです。
棟梁の頭の中には、鼓楼の設計図があります。その設計図のとおりに、1本1本の木が加工されて行きます。
文字を持たなかったトン族には、40年前に危機がありました。文化大革命の時です。社会主義には伝統文化が合わないと壊されました。10年続いた文化大革命が終わってから鼓楼をよみがえらせたそうです。
村人総出で行われる鼓楼の建設作業中にふるまわれた、かぼちゃ粥はおいしかったそうです。鼓楼を一棟建てるには、約450万円かかるそうで、村人たちの寄付でまかなわれます。
従江(じゅうこう)が取材の拠点
取材の拠点になったのは貴州省の従江(じゅうこう)という町で、今、正に開発中の町のようです。ビルや道路も建設中だそうで、その建設中の道路が路線バスのルートになっていて、トン族のいる銀潭村(ぎんたんそん)へもこの道を通って行くことができたようです。
中国の朝は、朝食をとりに町に繰り出す人々でいっぱいのようです。屋台の食事は一杯50円という安さ、昼食も100円~150円で食べられるようです。夕食も200円くらいのようです。主には炒めものと鍋もののようで、安くておいしいそうです。