世界最大・雲南省の棚田
2012年2月5日のNHKスペシャルでは、世界最大の棚田として雲南省の棚田を紹介していました。
標高1800mまでを切り開いて、稲作をしています。天空の棚田と呼ばれるのもうなづけます。幸運なことに水は豊富にあるそうです。が、何万枚もの棚田に水をくまなく行き渡らせるには、様々な工夫と労力がいります。
水をはった棚田の美しいこと、太陽の陽が指すと、また神々しい景色となります。
棚田の様子
急な山肌にある小さな田は、山の形に沿って作られているので、水をはった棚田は波のような模様を呈しています。
雲南省の棚田は、標高1800mまであり天空の棚田と呼ばれています。稲作にとって一番大切な水は、何万枚もの棚田を潤していて、それは魔術と思える程だそうです。
実りの秋には、黄金色の稲穂が美しく輝き、ハニ族の人たちも喜びに溢れます。この美しい棚田は2013年に世界遺産に登録される予定だそうです。
ハニ族の棚田での稲作の様子
ハニ族の人たちが、この天空の棚田を作っています。少数民族のハニ族は、文字を持ちませんでした。そこで、1300年前から、歌で米作りを伝えて来たそうです。
そして、皆で協力して米作りを綿々とおこなって来ました。誰かが手を抜くと、棚田全体のバランスが崩れます。
この土地は1年を通して霧が多いようです。9月下旬、霧は5日間続いていました。棚田には、田が300万枚もあります。全てが人の手で作られました。急な山肌を開墾して出来ていますから、機械などは入りません。
標高差は500mで、1500段を超える田があります。棚田のあぜの高さは3m以上もある所があります。
不思議なことに、天然の水の流れだけでまかなっていて、高低差だけで水を田にためていくのです。5月に田植えが行われ、推定2万枚を1500世帯で米作りをしていきます。
棚田の稲刈りの様子
この棚田では、稲刈りの時でも田に水が溜まっています。1年中天然の水が流れているからです。
5月から4ヶ月間は、毎日田にでて育てます。夏には、何回も草取りをします。生きていくには苦労はつきものとハニ族の人は言います。
田には、鯉の稚魚を放っています。鯉は虫を食べてくれ糞をして稲の肥やしになります。鯉を育てて、タンパク源として食べます。タニシも食べます。農薬を使わないので安全です。
稲を刈ったら、その場で叩いて籾を取ります。そして、村まで運びますが、村は田よりも高い場所にあります。標高差400mの村まで、40kgの袋を10袋を手分けして運びます。1人が往復2時間の道を3往復することもあります。
ハニ族の人はお米楽天 を作るために働き、そしてお米を食べると言います。この日の夕食は、鯉を丸ごと炒めた料理と蒸した米でした。自給自足の生活です。
しかし、村の生活も近代化し、2人の息子は現金収入を得るために遠くの町で働いているそうです。そこで、親戚の人たちが稲作を手伝ってくれます。
ハニ族の人は、祖先は棚田を開いてくれ宝物を与えてくれたと、感謝して暮らしています。
ハニ族の数奇な運命
雲南省の普高老化村にハニ族は住んでいます。1300年前に棚田を開き、今でも昔からの作り方を続けています。ハニ族の祖先はチベット高原の遊牧民でしたが、他民族に追われ6世紀にこの地にたどり着きました。
1300年前にこの急峻な山肌に棚田が開かれましたが、この棚田にはハニ族の祖先の血と汗が染みこんでいます。
そして、今棚田を引き継いでいるハニ族の人たちは、「毎年同じことを繰り返すことに意味がある」と言います。そう、大切な棚田を守って生きていることになりますからね。
棚田の水の秘密
10月中旬、稲刈りが済むと田の水が目立ちます。この棚田を潤すには1億立方メートルの水が必要だそうです。山の一番上には森があります。森の下の辺りに村があります。その村の下に棚田が広がっています。
山の上にある森には、広葉樹が生い茂り地面には幾筋もの溝があり、水が流れています。「水の木」というブナの仲間が生えています。この木は保水力があるそうです。そして、森は神の宿る所で、木を切ることを制限しています。
この辺りは1年中よく霧が発生しますが、霧が発生すると森に霧がさえぎられ葉に当たり、下へ落ちて清水となります。谷底から温かい風が吹きあがると、棚田の水蒸気を含んで霧となり、森の木に衝突して雨となって落ちます。
その水は、まず村の水路を流れ共同の洗い場へと注ぎ生活用水として使われます。
棚田の管理
村には溝長(こうちょう)という、水を公平に分ける役目の人がいます。水路の分岐点の調節などをします。
棚田では、自分の田だけよくしようとしてはダメです。他人の田に水が無くなると、自分の田にも水が来なくなるからです。みんな、棚田全体が良くなることを願っています。と、溝長(こうちょう)は話していました。
棚田での生活
村の葬式の時には、村人が棚田の米を持ち寄り死者に捧げます。亡骸は、棚田のそばに埋葬されます。そして、水牛を生贄にして、亡くなった人の後を追わせるそうです。そうすれば、死者はあの世でも棚田を耕すことができると信じられています。
稲刈りから1週間後には、再び田へ出ますが、水牛を引いて行き水牛を使って代かきをします。その上に1年で最も大切な仕事である、畦直しがあります。あぜの雑草を土ごと削ります。雑草の根が広がるとあぜが崩れてしまうからです。その後には、田んぼの泥を、薄くなったあぜに塗り盛り上げ、水が漏れないように丈夫なあぜにしておきます。その際には、田にある稲わらが補強材の役割をします。
こうして、あぜは毎年作り直されていきます。1軒が持つあぜは1kmにもなり、この作業は気の遠くなる重労働です。そして、この作業は、誰かが手を抜くと棚田全体のバランスが崩れることになります。
代かきが終わると、水を張って終了です。そして、しばらくは体を休めることができます。
この場所は、都会の人が見たら美しく見えるだろうが、ハニ族にとっては棚田は生きるために大切な場所だと言います。この村では、棚田は人が生きる原点であり、米を作り米を食べて暮らすと言います。
世界一の天空の棚田を次の世代へ
ハニ族の棚田は、次の世代へ脈々と伝えられていきます。
世界中からカメラマンが来て、朝日を受けて輝く棚田を撮影します。水田は空の色も映し出します。雲も流れます。世界一の天空の棚田は、大地の芸術と言われます。2013年に世界遺産に登録されると、ますます多くの人が観光に訪れそうです。