世界遺産・少林寺
2010年8月、ユネスコの世界遺産委員会が、中国河南省・登封にある少林寺などの歴史建築群「天地の中」を世界遺産として認定しました。中国では39番目の世界遺産となります。
世界遺産への登録が決まったのは、8カ所に集中している少林寺・長住院、塔林、初組庵、また東漢時代に建てられた中国最古の祭祀を行う建物・少室闕、啓母闕、さらに中国古代禮制建築物である中岳廟や、中国最古の天文台である観星台と周公測景台、中国で最初に儒教を公に伝えた崇陽書院など全部で11の古代建築です。
これで、世界遺産に登録された中国の歴史的名所は計39ヶ所になりました。文化遺産が28ヶ所、自然遺産が7ヶ所、文化と自然を含む複合遺産が4ヶ所となりました。テレビで世界遺産のシリーズとして放映していました。
少林寺へのアクセス
少林寺は、洛陽から東南東へ車で1時間半の距離にあります。鄭州(ていしゅう)からは2時間半かかります。洛陽や鄭州からは、旅行会社の日帰りツアーを利用すると便利だそうです。
観光ルートとしては、少林寺から歩いて塔林までいきます。この間に林の中を西南方向に歩くようです。塔林では、唐代の高僧たちの墓塔が並ぶ墓地があります。そこから、車で10分で中岳廟に着きます。この間、登封市内に降り市街を通り抜けます。
南麓にある道教寺院中岳廟は、秦代に作られ漢の武帝が訪れて拡張されました。清代にも再建され河南では最大の廟となりました。書院の庭には、武帝ゆかりの樹齢2000年柏の木があります。
少林寺などの歴史建築群「天地の中」とは
中国古代の宇宙観では、「天と地の真ん中にある国」が中国で、その中心となったのが「鄭州・登封」一帯でした。登封地区は中国古代で最も早く王朝が建てられ、中国文明発祥の地、文化の中心となりました。
少林寺などの歴史建築群「天地の中」は中国古代の宇宙理念を具現し、中国の伝統的な天文的理念と皇帝の権力を効果的に結びつけ、古代の建築、芸術、宗教と科学分野に大きな影響をもたらしました。この建築群には周公観景台、登封天文台、嵩岳寺塔、少林寺など漢、魏、唐、宋、元、明、清などの時代の建築物が含まれているようです。
少林寺と言えば少林寺拳法
少林寺は、嵩山(すうさん)の麓にあります。5世紀に創立された仏教寺院です。
伝説上で禅宗の開祖達磨と結び付けられ、少林拳・少林派と武当派で有名な嵩山少林寺には 少林寺拳法楽天 のほか、無形文化遺産の宝庫で、「独脚舞」は竹馬のようですが、1本脚で器用に舞う踊りなどもあります。
少林寺の千仏殿の敷石は、修行僧が修行をしたためにできた石のくぼみがあります。少林寺は、禅宗発祥の地で、6世紀にインドから来た達磨大師によって、修行の一つとして少林寺拳法が始められたようです。
11月には、年に一度の「禅七」という修行が行われます。49日間部屋にこもり修行に励みます。参加者は、長年修行を積んだ人のみです。会話禁止という厳しいものです。
邪念を払うために、一心不乱に歩くこと、坐禅を組むことで、欲望、悩み、死への恐怖などを無くし、無我の境地となるのが、禅の究極の教えだそうです。
たくさんの若者が入門して来ます。地道な修行を続け、執着心を無くし、無我の境地になるための修行が行われます。そうして、長年達磨大師の教えを守ってきたそうです。
達磨大師(だるまたいし)とは
南インドのタミル系パッラヴァ朝の国王の第三王子として生まれ大乗禅を学んで中国で渡り中国で活躍した仏教の僧侶です。
梁の武帝の尊崇を受けて、少林寺で禅宗を開きました。臨済宗、曹洞宗の始祖です。
生き残りをかけ30代住職・釈永信(45歳)さんの取り組み
中国の古いお寺には、厳しい時代がありました。1966年~1977年の文化大革命でした。古い文化・伝統を否定した革命で、少林寺も影響を受けて、建物が壊されました。
文化大革命が終わってから、釈永信(45歳)さんは入門しました。少林寺の破壊の様子に驚いたそうです。1982年には、映画「少林寺」が大人気となりました。そうすると、少林寺の名前を冠した武術学校が各地にできたそうです。酒を飲み、肉を食べる僧侶も出てきました。
そんな様子を見て、30代住職・釈永信さんは、少林寺を守るためには、どうすればいいか考えました。そして、1998年、少林寺の商標登録をする会社を作りました。少林寺のブランドを管理する会社です。少林寺の伝統を守るためには、外に出て行くしかなかったそうです。守りから攻めの姿勢に転じました。
新しい少林寺とは
2002年、少林寺拳法をショーとして公演したマレーシア公演を皮切りに、「秘伝の書」をインターネットで販売しました。上海万博の時には、「少林寺アニメ」を作り、大人気となりました。
こんな取り組みを始めたことから、30代住職・釈永信さんは、袈裟をかぶったCEOと呼ばれるそうです。
今では年間200万人が訪れる観光地となっています。また、少林寺の前庭の辺りでは、夜8時から音楽ショーが開演します。ショーに雇われた人が、少林寺拳法や踊りを踊ります。17億円の費用をかけ、観光客は15万人に達したそうです。投資の役7割は回収しました。少林寺は、名前を貸しているので、一定の割合の収入が入るようです。
少林寺は、お金で人の心をつかもうとしていると、批判する人もいます。
30代住職・釈永信さんは、時代とともに少林寺も発展していくと言います。新しい計画は、医の普及だそうです。
少林寺には、禅と武と医の3つのものが伝わって来ました。秘伝の漢方薬を使った湿布薬が、少林寺の薬局で売られています。おみやげに人気だそうです。
医の普及のために、病院を建てる計画が進められています。少林寺から車で10分の所、レンガ工場の跡地(10万m2)を20億円かけて、中国医学を施す病院を作る予定です。2008年の四川大地震で6万人の被災者が出たのを教訓に、心のストレスを取るために、自然療法を取り入れ、薬代の他はすべて無料にする方針だそうです。
中国の人たちのためにと、修行僧の人や、新しく入学した人が医学の勉強をしていました。