絶滅危惧種
人間の経済活動の促進によって、樹木が倒されたり道が舗装されたりして自然がなくなると、生物の今までの環境がガラッと変わり生存できなくなってしまいます。
元々、数が少なかった種では絶滅が危ぶまれています。日本の「朱鷺・とき」などは、絶滅種の代表だと思います。2003年に最後の日本産トキ「キン」が死亡し、現在生き残っているのは中国産の子孫のみとなりました。
絶滅が危ぶまれる種は、早めに対処して保護活動をすることが大切だと思います。
世界の絶滅危惧種
2009年6月8日、読売新聞に世界の絶滅危惧種が載っていました。
国際自然保護連合(IUCN)が2008年に発表した、世界の絶滅危惧種の数です。国別では、エクアドル楽天 が2208種で最多でした。海岸、高原、熱帯雨林、ガラパコス諸島と生物多様性の宝庫ですが、紛争や開発で森林破壊が急速に進んでいるそうです。
他にはマレーシア、インドネシア、ブラジルなど近年開発が進んでいる国がトップ10に顔を出しているようです。日本では309種の絶滅危惧種があります。
全世界 16928種世界の絶滅危惧種 | |||
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順位 | 国 | 合計 | 危惧種の例 |
1位 | エクアドル | 2208 | ウミイグアナ |
2位 | アメリカ | 1192 | アメリカアカオオカミ |
3位 | マレーシア | 1141 | ボルネオオランウータン |
4位 | インドネシア | 1087 | ジャワサイ |
5位 | メキシコ | 897 | ウーパールーパー |
6位 | 中国 | 816 | ジャイアントパンダ |
7位 | オーストラリア | 788 | タスマニアデビル |
8位 | ブラジル | 738 | ニョオウインコ |
9位 | インド | 659 | アジアゾウ |
10位 | コロンビア | 652 | オリノコワニ |
日本の絶滅危惧種
日本では環境省が、平成14年からレッドリスト(絶滅のおそれがある野生生物の種のリスト)の見直しを行い平成18年12月22日に発表しました。
日本の絶滅危惧種 | ||
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種類 | 種の数 | 種のうちに占める絶滅種の割合 |
鳥類 | 92種 | 約700種のうち13%の種が絶滅のおそれあり |
は虫類 | 31種 | 約98種のうち31%の種が絶滅のおそれあり |
両生類 | 21種 | 約62種のうち34%の種が絶滅のおそれあり |
その他の脊椎動物 | 56種 |
日本の絶滅危惧種は
具体的な日本の絶滅危惧種には、どんなものがあるでしょうか。
陸に住む、日本の絶滅危惧種
- イボイモリ
- イボイモリは、沖縄や奄美諸島に住んでいます。イボイモリは大昔からずっと同じ姿なので、「生きた化石」とも呼ばれています。森や林が失われたことが、絶滅の原因となっています。側溝に落ちると、上がれなくて死んでしまいます。背中には、イボのようなものが見られますが、イボではなくて肋骨が盛り上がったものだそうです。そして、そんな姿が恐竜に見えるようです。体長は約5~8cmで、体重は5~25kgだそうです。
- アマミノクロウサギ
- アマミノクロウサギは、奄美大島、徳之島に住んでいます。耳や後脚の短いアマミノクロウサギは、原始的なウサギだそうです。森の木がたおされて、エサやかくれ場所が無くなり数が減ってしまいました。体長は45.2cm、尾の長さは2.7cm、体重は2~2.6kgだそうです。
- イシカワガエル
- イシカワガエルは、沖縄本島、奄美大島に住んでいます。日本で一番美しいカエルとも言われるようです。緑と紫の模様は、敵に見つからないように、体をコケの生えた岩に似させているそうです。「キョー、キョー」という大きな声で鳴きます。森がなくなり、川がよごれ、絶滅の危機にあります。両生類は、環境の変化にとても弱いそうです。体長は約10cm前後です。
- ハナサキガエル
- ハナサキガエルは、沖縄本島の北部に住んでいます。他のカエルと比べ、鼻の穴が顔の先の方についているので、ハナサキガエルという名前がついたようです。森にダムや道路が作られたり、ハナサキガエルの見物客の影響で、数が減ったそうです。体長約6cm前後です。
- リュウキュウヤマガメ
- リュウキュウヤマガメは、沖縄本島、久米島、渡嘉敷島に住んでいます。リュウキュウヤマガメは、卵を一度に1個しか産まないそうです。数が一度減ると、なかなか回復しません。ミミズや昆虫だけでなく木の葉も食べるそうです。甲羅は最大で15.6cmです。
- ツキノワグマ
- ツキノワグマは、イランから日本まで広い地域に住んでいます。胸にある三日月模様が目印です。森林が減り、薬にするための狩猟により、絶滅の危機にあります。クマの中では体が小さく、他の動物を襲うこともあまりありません。思ったよりも、大人しい動物です。体高は、50~120cm、尾の長さは6~10.5cm、体重はオスが50~120kgで、メスは40~70kgです。
- ヤンバルクイナ
- ヤンバルクイナは、沖縄本島の森林に住んでいます。1981年に発見されました。飛べない鳥で、人間が島に持ちこんだマングースやネコにおそわれて、数が減りました。トカゲや昆虫を食べます。全長は35cm、体重は435gです。
空を飛ぶ、日本の絶滅危惧種
- トモエガモ
- トモエガモは、シベリアで子育てをして、日本、韓国、中国などで冬を過ごすそうです。オスは、白、黒、茶、緑などの綺麗な毛の色をしています。狩猟によって数が減りました。全長は40cm、広げた翼は67cmです。
- ノグチゲラ
- ノグチゲラは、沖縄本島北部のやんばるの森に住んでいます。キツツキの仲間で、森が減ったり、ネコなどの被害により減ったそうです。全長は31cm、広げた翼は16cmです。
- オガサワラオオコウモリ
- オガサワラオオコウモリは、小笠原諸島に住んでいます。小さい割に長生きで、18年も生きたものがいるようです。木の実や葉、花やその蜜を食べるようです。体長は20~25cm、体重は390~440gです。
- オオワシ
- オオワシは、夏はカムチャッカ半島やサハリンなどで子どもを育て、冬は朝鮮半島や日本で過ごします。巣を作る森やエサの魚が少なくなり、5000羽ほどにまで数が減りました。食べ物は、サケなどの大きな魚、子どものアザラシ、ホッキョクギツネなどです。全長は、85~94cmです。
- タンチョウ
- タンチョウは、日本の北海道や中国などの湿地に住んでいます。タンチョウのオスとメスは一生同じペアで暮らします。鳥や動物の世界では、とても珍しいことだそうです。食べ物は、植物の葉や種、湿地にいる昆虫や魚、カエルなどです。全長は約150cm、広げた翼は約240cm、体重は6~12kgです。
- クロツラヘラサギ
- クロツラヘラサギは、朝鮮半島や中国、日本の海辺や干潟で冬を過ごします。冬を過ごす場所が工場や畑になってしまい、数が少なくなりました。夏は朝鮮半島などで子どもを育て、冬になるともう少し暖かい台湾や日本に移動します。食べ物は、魚やカニ、エビです。全長は、74cm、広げた翼は約110cmです。
- シマフクロウ
- シマフクロウは、ロシアや中国、朝鮮半島、日本の北海道などに住んでいます。フクロウの仲間の中で、最も大きく、最も絶滅が心配される種類の一つです。食べ物は、サケなどの魚、ネズミ、ウサギ、カモなどです。全長は71cm、広げた翼は190cm、体重は3.4~4.1kgです。
泳ぐ、日本の絶滅危惧種
- トド
- トドは、北太平洋やベーリング海に幅広く住んでいます。トドはたくさんの魚を食べますが、人間に取られ食料が無くなり減ったようです。アシカの仲間で一番大きいのがトドです。1000頭以上の群れで陸に来ることもあるそうです。食べ物は、スケトウダラ、サケ、ホッケ、ニシン、イカ、タコなどです。全長は、オスで最大3.3m、メスで最大2.5m、体重はオス約1t、メス約270kgです。
- アオウミガメ
- アオウミガメは、熱帯から温帯の海に、幅広く住んでいます。アオウミガメの肉や卵は、昔から食用として人気があり、減ってきました。ウミガメは肉食ですが、アオウミガメは海草を好んで食べます。子どものアオウミガメはカニ、クラゲなども食べるそうです。甲羅の大きさは80~100cm、体重は70~230kgです。
- ホクリクサンショウウオ
- ホクリクサンショウウオは、石川県、富山県の一部だけに住んでいます。池や沼が減ったり、水が汚れたりしたことで減っています。1970年代に発見されました。数が少なく、夜行性なので、なかなか見つからなかったそうです。食べ物は節足動物やミミズです。全長は約10cm程です。
- ラッコ
- 北太平洋の海岸に住んでいます。ラッコは、水族館の人気者です。が、昔は毛皮が人気でした。たくさんのラッコがねらわれて、一時は絶滅しそうでした。石を使って貝やカニのカラを上手に割ることで有名です。ラッコは道具を使うめずらしい動物です。食べ物はウニやアワビ、エビ、カニなどです。体長は110cm、体重は34kgです。
- ニホンカワウソ
- 北海道から対馬まで全国に広く生息していましたが、1979年以来目撃例がなく、2012年絶滅種に指定されました。愛媛県の県獣でした。河川の中下流域、砂浜や磯などの沿岸部に単独で生息していたそうです。夜行性で、魚類、テナガエビ、カニ、カエルなどを食べていました。体長64.5-82.0cm、尾長35-56cm、体重5-11kg。
アカガシラカラスバトの保護活動・小笠原諸島の父島
東京都の小笠原諸島では、固有種のハト・アカガシラカラスバトの保護活動が、官民一体で進んでいるようです。
アカガシラカラスバトは、体が黒っぽく、頭が紫がかった赤褐色でカラスに似たハトです。体長約40cmでドバトより一回り大きいそうです。約40羽が生息していると推計されています。絶滅の危機にある小笠原諸島の野生生物の象徴的な存在となっています。
NPO法人「小笠原自然文化研究所」は、2005年から環境省、都、村と協力し野生化した猫の捕獲をしています。無人だった小笠原諸島へ入植者が猫を持ち込み増えました。
アカガシラカラスバトは、それまで外敵がいなかったために警戒心が薄く、野生化した猫の餌食となりました。これまでに、216匹の猫を捕獲し、飼い主を探しています。
2003年に林野庁は、父島の生息地にサンクチュアリを設定しました。アカガシラカラスバトの餌となる在来の植物シマホルト、ムニンシロダモなども保護しています。また、これらの生育を妨げるアカギやモクマオウなどの外来種の木の駆除も行っているようです。
上野動物園では繁殖活動をしています。2001年に捕獲された3羽が現在20羽になり、上野動物園や多摩動物公園で公開されています。
アツモリソウ復活の夢・長野県富士見高校
長野県富士見町の富士見高校バイオテクノロジー部では、地元の山に自生し絶滅が危ぶまれている蘭の一種・アツモリソウの育成に取り組んでいます。
2011年2月19日、東京ドームで開かれる「世界らん展日本大賞2011」で、部員がアツモリソウの再生について発表するようです。
アツモリソウは、ラン科の多年草、高さ約30cmで、白や紫の花があります。富士見町の釜無山に自生するアツモリソウは、「釜無ホテイアツモリソウ」とも呼ばれ、6月に濃い紅色の花をつけるのが特徴だそうです。
鮮やかな色が観賞用として人気が高く、マニアの乱獲や鹿の食害などで激減したそうです。昭和40年代まではよく見られたようです。
2006年、富士見町はアツモリソウの保存などを目的に、園芸科のある富士見高校や町民らと再生会議を発足。町内の山を調査したら、約20株が生き残っていることを確認しました。
そして、人工的に苗を育てる試みも始まりました。部員たちは、「花が咲くまでに5~6年かかるなど、繊細で育てるのが難しい植物」と言います。
様々な土や入れ物の組み合わせを15種類作り、どの条件が良いかビニールハウス内で観察しました。調査の結果、発泡スチロールの箱に、通気性の良い砂を多く混ぜた土を入れた物が発芽率が最も高いと判明したそうです。
通気性と保水性を保つのがポイントと、顧問の関弥文先生は話しています。
目標は、町中をアツモリソウでいっぱいにすることだそうです。町のあちこちでアツモリソウが咲けば、野生種の乱獲がなくなるかもしれない。富士見がアツモリソウの町として全国に知られるようになりたいと、部員たちは夢を語り合っています。
カエルツボカビ(ツボカビ症)が日本上陸
2006年12月、日本国内で初めて、飼育されているカエルからカエルツボカビが検出されました。東京都内で個人がペットとして飼っていた中南米産のカエル11種35匹中、14匹が次々と死に、麻布大学での検査でツボカビ症と確認されたのでした。
アマガエル、ガマガエルなどの鳴き声は、時としてうるさいなと感じることもありますが、全くいなくなり鳴き声を聞くこともできなくなったら、なんとこの世は寂しいものになることでしょう。
いろんな生き物がいて、季節感を味わうことができます。毒は薬として人間に役立ってくれています。同じ時代に生きる者同士としてお互いに助け合っていきたいですね。