沢田の杖塾(さわだのつえじゅく)
NHK岡山放送局の「現場に立つ」という番組の第6回目に、沢田の杖塾(さわだのつえじゅく)が放送されました。
今、様々な問題が起きている教育現場で、日々悩んでいる教師に寄り添い、教師の杖となりたいと沢田の杖塾(さわだのつえじゅく)を開いておられる、森口章さんの活動を記録したドキュメンタリーでした。
沢田の杖塾(さわだのつえじゅく)を開く森口章さん
岡山市中区沢田で沢田の杖塾を開いている森口章さんは、元高校教師でした。5年前に退職されてから、教師に寄り添い支える杖になりたいと思い沢田の杖塾を開かれました。
森口章さんは、カウンセラー楽天 の資格を持ち、高校でも相談室を開設されていました。そこでは、生徒の相談にのることが主な仕事でしたが、先生達も悩みの相談に来られました。
定年を機に、森口章さんは沢田の杖塾を開設され、おじいちゃんの家として落ち着くと相談者から言われるそうです。1年間に約40人が訪れるようです。
現場の教師の悩みとは
現場の教師の悩みで多いのは、子どもと向き合いたいのに、子どもと向き合う時間がないというものでした。
- 30歳代高校女性教師の場合
- 生徒と話をする時間がない。自己目標ノートなどの事務処理に時間を取られている。放課後も、会議、研修があり、また、土曜日にも授業がある。
- 森口章さんの支援法
- 教師として一番したいことに手が回らないのは、出口がない、深刻だなあ。森口さんは、相談者自らが答えを出すまで待つそうです。この日は、1時間しても出口は見つかりませんでした。
- 40歳代小学校教師の場合
- もう、5年この沢田の杖塾に通っておられるそうです。落ち着きのない子、不登校気味の子がクラスにいるそうです。会議に追われる日々で、子どもや保護者とどう連絡を取ったらよいのか悩んでいます。
- 森口章さんの意見
- 教育方針が、ゆとり教育から学力重視に移行して来ました。そして、教育の優先順位が狂っている。教師の病気の半分がうつ病と言われます。自信を失い、教職を退職する人もいます。岡山県でも教員評価システムが5年前から始まった。教師を5段階に分けるものです。
- 50歳代中学校教員
- 職員会議で、事務の見直しを提案したが、校長を前にして賛成する人はいなかった。学校で孤立し、精神疾患になり、頭痛やめまいなどの症状も出ている。教師がお互いに話をする時間がない。職員会議でも上から指示命令が出て、誰も拒否できない。それは辛い。子どもともっと向き合いたいということすら言えない。
- 森口章さんの意見
- 校内暴力、不登校への対処法だけではダメです。岡山県は、欠席から3日間の対応(家庭訪問など)、毎月の不登校の報告を学校に求めているようです。
森口章さんの学校を回る
森口章さんは、ある日岡山市内の小学校で、校長を含めた教師達にお話をされました。
教師は、お互いに同僚の目にひやひやしている状況があります。
- doingと,being
- doingは、○○しているけど、もっとこうしたらどうですか、と具体的なアドバイスをするのはダメです。beingは、今こうある気持ちを受けとめることで、○です。
- 講義を受けた教師の感想
-
- 人の発する言葉の大切さを実感した。
- 教師同士が力を合わせることが重要。
- 行き詰まっている時に、声をかけてくれる人がいると、ずいぶん違うと思う。
- 学校の中では弱音をはきにくい、だからこそ言って欲しい。
杖となる人を育てる
森口章さんは、教師の杖となる人をたくさん育てることを目標にされています。そして、学校の雰囲気が変わっていくことで、教師が元気になります。
教師が元気になると、子ども達も自然に元気をもらうことになります。教師がキラキラと目を輝かせていると、人間の魅力に引きこまれるのは、素直な子どもの特徴だと思います。
文書、文書で管理するのではなく、もっと大きな目で教師を信頼し、子ども達にも教師が愛の目を注げるようにして欲しいものです。
また、一方で、保護者からのクレームが多い時代だと聞きます。保護者も教師に裁量に任せるべきは任せることが必要だと思います。完璧の人間からしか学べないことはありません。私の経験からしても、エネルギー、情熱を持った教師、熱心な教師、心配りのできる教師が、後々心に残る尊敬できる教師となっています。
教育という人間を育てる仕事には、想像力が必要です。日々の事務処理に追われていては、よい授業ができそうにありません。教育委員会にもそのことを考えてもらいたいものです。