備前焼(びぜんやき)
岡山で有名な陶器といえば備前焼楽天 です。土のぬくもりを感じる素朴な焼物、備前焼。12世紀頃から焼かれ、主に壷、すり鉢、甕(かめ)などが大量生産されていました。 備前焼は上薬を塗らないので、ごつごつとした手触りがあり素朴な焼き物です。備前焼の渋さが茶人に好まれ、花生、水指、茶入、建水なども作られるようになりました。 |
国指定重要無形文化財保持者(人間国宝)と認定された備前焼作家
金重 陶陽(かねしげとうよう)氏 1956年認定
1896.1.3生~1967.11.6没
桃山風備前を復興し、備前焼発展の礎を築いた功績から、『備前焼中興の祖』と呼ばれています。
金重 陶陽(かねしげとうよう)は、若い頃から頭角を現し、細工物の名人と言われました。 40歳を前にして、備前焼が持つ本来の造形美と土味を表現するために、300年近く途絶えていた桃山備前の再興を志しました。 |
細工物からろくろを使った茶陶への転換、陶土、窯の構造、窯詰め、焼成などの試行錯誤を繰り返しました。そして、血のにじむような研究・努力の結果桃山備前の多彩な窯変(ようへん)を作り出すことができました。 享年71歳、金重 陶陽(かねしげとうよう)の備前焼への情熱は、多くの作家たちに受け継がれています。 「ボッケーノ」2008年秋号から抜粋 |
藤原 啓(ふじわらけい)氏 1970年認定
1899.2.28生~1983.11.12没
鎌倉・室町時代の素朴で力強い美を学び、また近代的な感覚をも作品に取り込み、素朴・豪放さもった作品を作りました。
山本 陶秀(やまもととうしゅう)氏 1987年認定
1906.4.24生~1994.4.22没
ロクロの技術がうまく『ロクロの名人』と言われました。繊細優美な作風で茶入を好んで作ったため『茶陶の陶秀』とも呼ばれました。
藤原 雄(ふじわらゆう)氏 1996年認定
1932.6.10生~2001.10.29没
藤原 啓の息子。単純、豪放、明快をモットーとしました。壺を好んで作り、「壺の雄」と言われました。
伊勢崎 淳(いせざきじゅん)氏 2004年認定
1936.2.20生
穴窯による備前焼の製作を復活させました。現代的造形感覚で、自由な製作を目指しています。備前焼レリーフ作家の代表格と言われています。
第28回備前焼まつり
2010年10月16日、17日の両日第28回備前焼まつりが行われました。16日には、県内外からの人が7万人集いにぎわいました。備前市伊部のJR伊部駅周辺を主会場に始まりました。
特設テントや常設店では、岡山県備前焼陶友会(178人・団体)加盟の作家や窯元が制作した約40万点を、全て通常価格の2割引で販売されました。
備前焼まつり(備前焼祭り)
日時 平成20年10月18日(土)9:00~17:30 10月19日(日) 9:00~16:30
(毎年10月第3日曜日とその前日)
場所 備前焼伝統産業会館及びJR赤穂線 伊部駅周辺
お問合わせ先 岡山県備前焼陶友会 電話 0869-64-1001
昭和58年から開催されている備前焼まつりは、2日間で約16万人もの焼物愛好家が訪れます。この日は、備前焼陶友会会員の作品が2割引で展示即売されたり、「備前焼小町の表彰・撮影会」、「ろくろ実演」、「ろくろチャレンジコーナー」、「茶席」、「備前の器と野の花」展など多彩な催しが行われます。前夜祭としては、炎のまつり「かべりだいまつ」が催され、伊部の街並みを大たいまつを持った地元の人々が練り歩きます。
両日のイベント
・お楽しみ抽選会・福袋の販売・茶席・ろくろチャレンジ・ろくろ実演・「野の花と器」展・閑谷学校へシャトルバス運行
*18日(土)は備前中学校の生徒による車椅子の介護サービスがあります。9:00~15:00
*両日、伊部のまち並みをご案内する観光ボランティアガイドがあります。13:00から1時間のみ。
岡山県備前陶芸美術館
古備前から現代までの作品と資料が展示されています。4つのフロアがあります。
1階では、採土から窯出しまでの工程を解説してあります。
2階では、桃山時代の名品や江戸時代の彩色備前など古備前の世界を堪能できます。
3階では、金重陶陽、藤原啓、山本陶秀、藤原雄、伊勢崎淳氏ら5人の人間国宝の代表作を提示してあります。
4階では、物故作家たちの作品が一堂に集まっています。
財団法人 岡山県備前陶芸美術館住所 | 〒705-0001岡山県備前市伊部1659-6 |
電話 | 0869-64-1400 |
会館時間 | 9時30分~17時(入館は16時30分まで) |
休館日 | 毎週月曜日(祝休日の場合は翌日)、年末年始 |
入館料 | 大人500円、高校・大学生400円、小・中学生250円 (特別展期間中は別途料金) |
備前焼の特色
- 備前焼は2週間ほど1200度以上の高温で焼きしめるため、とても強度が強く丈夫です。
- 保温力がすぐれていて熱し難く冷め難いので、備前焼のビアマグで冷たいビールを飲んだり、備前焼の湯のみで温かいお茶を飲んだりすると最高においしいです。
- 備前焼には細かな凹凸があるのでビールの泡がきめ細かくたち、おいしいビールが飲めます。
- 花びんの花が長持ちします。
- 使うほどに味わいが出てきます。
備前焼の焼味(びぜんやきのやけあじ)
胡麻(ごま) | 表面が溶け、薪の材料である松の木の灰が付いてゆう化したもの。 白、黄、褐色、緑の胡麻がある。 微塵胡麻、飛び胡麻、糸胡麻、玉だれがある。 人為的に付けたものには、かけ胡麻、打胡麻、置胡麻がある。 |
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桟切(さんぎり) | 表面が溶け、薪の材料である松の木の灰が付いてゆう化したもの。 白、黄、褐色、緑の胡麻がある。 微塵胡麻、飛び胡麻、糸胡麻、玉だれがある。 人為的に付けたものには、かけ胡麻、打胡麻、置胡麻がある。 |
緋(ひ) | 強すぎる焔を受けた時や、近くの作品や地面とくっついて直接焔を受けなかった時に、一部分だけ緋色になる。 |
緋襷(ひだすき) | 強すぎる焔を受けた時や、近くの作品や地面とくっついて直接焔を受けなかった時に、一部分だけ緋色になる。 |
牡丹餅(ぼたもち) | 窯入れする時皿の上へぐいのみなどを載せたりすると、胡麻がかからない所ができたり、焼き色が違ってきたりする。そこが、ぼたもちを置いたように見えたことから名付けられた。とても珍重されたので、後には意図的に作るようになった。 |
岡山県重要無形文化財保持者
各見 政峯(かくみせいほう)(86) 金重道明氏に指導を受けた。土味を生かした作品が多くあります。
松井興之(まついともゆき)(75) 清水焼を学ばれた経験をも生かした鮮やかな備前焼の作品が多くあります。
山本雄一(71) 人間国宝山本陶秀氏の長男。人工の緋襷を作り出し、緋紋や緋彩の技法を考案しました。
森陶学(70) 森秀次氏の長男。古備前に魅せられ、大窯を研究しています。全長90メートルの新大窯を建設中です。
伊勢崎満(73) 父、伊勢崎陽山に師事。古典的な上品な作品が多くあります。
吉本正(63)藤原啓(豪放素朴な作風)を師に学びました。端正で人の心をなごませる作品です。深みのある独自の「たたら造り」の手法で、粘りのある備前の土を練り方で粘りをなくし、器の内側から作ります。2007.6.20現在
備前焼小町
備前焼の窯元や作家らでつくる協同組合・県備前焼陶友会は、第21代備前焼小町を選びました。
第23代備前焼小町(2009年) 久本真菜(備前市) 神戸女学院大3年
第22代備前焼小町(2008年) 羽原なおこ(岡山市)
久本さんの任期は7月1日から。土ひねりや東備地域の観光についての研修を受けた後、県内各地や全国の主要都市で、「土と炎の芸術」を宣伝。2009年10月17、18の両日、備前市で開かれる備前焼まつりへの来場を呼び掛けます。
第21代備前焼小町(2007年) 宮原夕佳(みやはらゆか)さん(20) ノートルダム清心女子大3年
第20代備前焼小町(2006年) 岡崎夢(20)
二人で8月から県内各地や全国主要都市で備前焼をPRすることになりました。
任期は7月から1年間で、10月20日・21日に開催される第25回備前焼まつりで活躍されることとなりました。2007.6.21
備前焼窯元と窯印(かまじるし)
16世紀に始まった備前焼の大窯では、特定の窯に属した数人の人で経営されていました。その頃の窯印(かまじるし)が出てきたことで明らかになっています。
よく言われる、窯元六姓は、金重、寺見、森、木村、頓宮、大饗です。古文書と作品の銘に度々出てきました。
江戸中期以降、窯の規模が小さくなり、明治以降は会社や個人の窯に移行してきました。
大窯時代以降は、数人の仲間によって備前焼の製造販売がなされていました。職人が多かったので、備前焼の胴や底に作者の目印を付けた、これが窯印です。
窯印には、へらやくしで刻み付けたもの(手印・てじるし)、印を押し付けたものがあります。
備前焼で作られた手榴弾
備前市歴史民族史料館(備前市東片上)の展示室を改装し、太平洋戦争末期に作られた備前焼や清水焼の手榴弾の弾体(容器)と、戦艦大和用に作られた備前焼の碍子がいし(絶縁体)などを常設展示しオープンしました。
備前焼作家や窯元がやむなく従いましたが、やがて終戦を迎え、実際にはほとんど使われなかったそうです。備前焼の弾体は、人間国宝の山本陶秀氏が納品を免れて自宅の庭に埋めていたものを1988年6月、家の改築に伴って掘り出したうちの約100個を展示しています。高さ8センチ、直径6センチ、厚さ1.5センチで、火薬はなく中は空洞となっています。
備前焼の碍子は、戦艦大和の艦橋部のアンテナ線の連結用で、備前焼伊部の窯元「金重利陶苑」が旧海軍呉工廠(こうしょう)に納品した後に残った5個です。
また、江戸時代の備前焼窯跡「伊部南大窯跡」から出土したすり鉢なども展示しています。
入館無料。問い合わせは、備前市歴史民族史料館(0869-64-4428)読売新聞2007.7.8
2011年の干支、白備前ウサギ、最高の出来
2010年11月22日、備前市伊部の備前焼作家、木村玉舟さん(57)が、来年の干支のウサギをかたどった白備前の陶彫40点の窯出しを行いました。
白備前の干支作りは16回目だが、今年は最高の仕上がりと話しています。
12年前のウサギと違い、丸顔の愛らしいウサギを表現しようと、池田動物園などで観察しました。ウサギの腹の部分は赤味がかっており、木村さんは釜から出した作品を1点づつ丁寧に確認していたそうです。
「ウサギは、家族愛があふれると言われる。国際情勢は不安定だが、来年は国民が仲良くなることで、平和な社会にとの思いを込めた」と、木村さんは話しておられます。
作品は、12月1日から備前市伊部にある木村さんのギャラリーで展示されます
2010年の干支の寅を白備前、黒備前で作る
備前市伊部の備前焼作家、木村玉舟さん(56)が、11月10日来年の干支の寅をかたどった乳白色の備前焼・白備前の陶彫20点の窯出しを行いました。
例年より白みを増すことに成功したようです。江戸時代には白備前が焼かれていましたが、途絶えていました。1994年、木村さんが鉄分の少ない土を使って釉薬を使わずに白を出すことに成功しました。翌年から毎年干支の陶彫を焼いています。
この一部は12月2日~8日に天満屋岡山店で、来年1月1日~15日に池田動物園のトラ(モデルにしたトラ)の近くで展示されるそうです。2009.11.20