腎臓病

腎臓病の人が増えているそうで、糖尿病の人が多いこととも関係するようです。1300万人が慢性腎臓病で、日本人の10人に1人、50歳以上の5人に1人が相当すると言われています。

かくれ腎臓病で本人は気がついていない場合が多いようです。高齢化、糖尿病患者の増加により新たな国民病として注目されています。

腎臓の位置

腎臓は腰の少し上で肋骨のすぐ下に位置し、背骨を中心に左右に1個ずつあります。大きさは握りこぶし位でそら豆のような形をしています。重さは約150gで、レモン1個分の重さに相当するようです。

右の腎臓の上半分は肝臓の左下の部分の奥(後ろ)にあるそうです。左の腎臓は、胃や脾臓の後ろ側にあります。位置的には、一番下の肋骨と脊椎が繋がっている辺りにあります。急性腎盂炎や腎臓結石の時などには、背中が痛むそうです。

腎臓の働き

腎臓の働きは、尿を作ることです。尿に体の老廃物を出します。また、水分や塩分の調節もしています。血圧や赤血球やカルシウムの調節も行っています。

 腎臓には糸球体という極極細い血管の塊が片方の腎臓で100万個あり、そこで血液中の老廃物や余分な水分を漉しています。1日になんと1400リットルも漉すそうです。ドラム缶7本分と言われます。

腎臓には心臓から流れ出る血液の約4分の1から5分の1にあたる毎分約1リットルの血液が流れ込んでいます。この血液が糸球体で濾過され、1分間に約100ミリリットルの原尿ができ、原尿は尿細管と集合管で再吸収され、1ミリリットルの尿になります。1日分にすると、約150リットルの原尿から約1.5リットルの尿ができることになります。最初に糸球体で血液を濾過して大量の原尿をつくり、その後、尿細管と集合体を通る間に調整を加えて最終的な尿をつくる仕組みだそうです。

極極細い血管は、1/100mm以下の血管だそうで、だからこそこの血管は壊れやすいのです。

腎臓からは、多くのホルモンが分泌されています。血圧を調整するホルモン、血液を造るホルモンです。また、骨を丈夫にするビタミンDを活性化する物質も腎臓から出ています。腎臓が障害されると、高血圧、貧血、骨粗鬆症などの病気が出ます。

自覚症状のない腎臓病

ある男性は、激しい胸の痛みを感じて病院へ行きました。検査の結果、心臓の血管が詰まっていることが分かりました。血管を広げる手術をしてもらい一命を取り留めました。

血液検査の結果、血清クレアチニン(筋肉が活動した時にできる老廃物。尿に出さなければならないものが、血液中に残る)の値が1.9という正常値の2倍ちかくもありました。そして、腎機能は、1/3になっていました。自覚症状は、最近尿の勢いがないなあと感じていただけでした。この男性の場合は、前立腺肥大症と思っていたようでした。腎臓病楽天 からきた心筋梗塞でした。

腎機能が2割、3割に落ちても自覚症状が出ないことが多いようです。さすがに腎機能が1割になると症状が出るようです。一度腎機能を失うと、回復させることはできません。腎臓病の人は、血圧や血糖値の高い人が多く、心臓病や脳卒中を起こしやすいと言われています。

40歳代から高血圧だった人が、ちゃんと治療をせずに放っていて、大学病院で検査を受けたら腎臓の大きさが8cm、普通の大きさの2/3に縮んでいたそうです。40歳をすぎたら毎年健診を受けて、尿検査、血液検査、血圧、心電図などの検査を受けることが大事です。

血尿で見つかった腎臓病・IgA腎症

40歳代女性は風邪をひいた後に尿が赤紫色をしていて驚き、病院で受診したら尿に血液、たんぱくが出ていて腎臓病と診断されました。2ヶ月ごとに検査をしていましたが、2年後に尿たんぱくが増えたために腎生検(体外から腎臓に針を刺して組織を少し取ってきて調べる)を行いました。

検査の結果は、IgA腎症というものでした。IgA腎症は、体内に入ったばい菌などから防御するIgAというたんぱく質が腎臓内にたくさん沈着し、炎症をおこしているそうです。日本人によく見られる腎臓病ですが、詳しいことはわかっていません。

治療は、腎臓への負担を減らすように、たんぱく質や塩分の制限をする食事療法と降圧剤を飲んで血圧を下げます。近年では、ステロイド(副腎皮質ホルモン剤)で炎症を抑えながら、扁桃(細菌などが多く潜んでいる)を手術で摘出する方法も試みられています。

前述の女性の場合は、40日間の入院でステロイドの点滴と扁桃摘出術を受けました。半年で血尿・たんぱく尿が消えたそうです。ステロイドは、10ヶ月の今も飲んでいるようです。たぶん、量は減っていると思われます。この方法は、まだ不明な点も多いそうで、効果がない場合や薬を止めると再発するケースもあるようです。

どんな症状が出たか

60代男性の場合は、食欲が無くパンが半分しか食べられない、体重が減った、脱力感などの症状が出ました。病院で血圧を測ると上が280もあり、すぐ車いすに乗せられて入院となりました。腎臓が正常の20%の働きしかしていませんでした。1ヶ月入院し、その後も治療を続けているそうです。

他には、吐き気、頭痛などが出ることもあります。

蛋白尿はあるサイン

糸球体には動脈から血液が入ります。そして、糸球体で、たんぱく質は出さず、クレアチニンは出すという振り分けがされます。

糸球体の目が詰まったら、水分も出なくなります。糸球体の目が正常な状態から、網目が広がった時に、タンパクが尿に出ます。その後に目が詰まるそうです。

蛋白尿が出たら、そのまま放おっておくと、目が詰まってしまうこともあります。蛋白尿が続いたら、医療機関で適切な検査・治療を受けることが大切です。

高血圧と腎臓病

高血圧になると塩分が血管に残り、塩分を薄めようと水分が血管に入ってきます。そうすると血管の圧があがり、高血圧となり悪循環が始まります。糸球体の細い血管で圧が上がると血管がこわれ腎臓が悪くなります。さらに高血圧が進み全身の血管の動脈硬化も進みます。

そして、心筋梗塞や脳卒中の発作が起きることとなります。腎臓病の人はそのリスクが2、3倍増えるといいます。

高血圧から腎硬化症へ

50歳代男性は、40歳代の頃から血圧が150-90程度あったそうです。放置していたら約10年後、健診で腎臓が悪くなっている恐れがあると指摘されました。血圧は160-100、たんぱく尿も出ていました。母親も腎臓が悪く人工透析を受けていたそうです。

入院して腎生検をしたら、腎臓の中の細い血管に動脈硬化が見つかり、腎硬化症と診断されました。動脈硬化のために腎臓の中の血流が悪くなると、尿中にたんぱくが出たり、濾過機能の低下を招いたりします。

また、血流が減ると、腎臓から血圧を上げるホルモンが分泌され、高血圧を招く悪循環に陥るそうです。

減塩、食べ過ぎに気をつけたり、運動も適宜行う必要があります。薬は血圧を上げるホルモンの分泌を抑える「アンジオテンシン2受容体拮抗薬(ARB)」などを飲みます。現在血圧は、137-90までに下がり、たんぱく尿も減ったそうです。

腎硬化症の人が一気に血圧を下げると腎臓内の血液が減り、かえって腎機能が落ちるので注意が必要だそうです。薬は使いすぎず、食事、運動療法を合わせて2~3ヶ月かけて血圧を下げることが大切なようです。

慢性腎臓病の症状

慢性腎臓病(CKD)Fは、腎臓の働きが正常の6割未満に低下している、または、尿の異常、とくに尿たんぱく陽性が3ヶ月以上続いている状態を言います。

何かの原因で腎臓に障害が起こっているか、脳や心臓、腎臓に血液を送る生命の維持に重要な血管の障害が進行している可能性を示しているようです。

慢性腎臓病の初期には自覚症状がほとんどなく、進行すると腎機能が低下し身体の水分が除けない状態になります。そうすると心臓も水ぶくれします。体重が増えたり、足がむくんだりします。腎機能が正常の1割ほどまで低下すると透析が必要になります。

腎臓ではホルモンの生成の働きもあります。が、慢性腎臓病になるとホルモンの異常がみられます。骨粗鬆症を発症したり、カルシウムが心臓や脳に沈着することもあります。

慢性腎臓病は、毒が体にたまり、次に血液に毒素がたまり、次に腎臓をこわし、次に心臓の血管をこわし、毒によって動脈硬化が進行するという具合に進んでいくそうです。蛋白尿、尿の泡立ち、むくみ、疲労感などの症状が出ます。

40歳以上の人は、年に一度は、検尿と血液検査を受けることが大切です。

慢性腎臓病と脳卒中などの心血管系疾患との関係

腎臓は老廃物の濾過機能、血圧を調整する機能があります。腎機能が低下することで、老廃物、水分、ナトリウム、毒素が体内にたまり、血管を傷つけ動脈硬化になります。

血圧調整機能も狂い、血圧が上昇することで、腎臓に負担がかかりさらに腎機能が低下するという悪循環に陥ります。

慢性腎臓病の人は、元から高血圧、糖尿病を合併していることも多く、動脈硬化はさらに進行し、脳卒中などの心血管系疾患が発症しやすいようです。

慢性腎臓病は、透析よりも、血圧が高くなり、動脈硬化を起こすと3倍、脳卒中や心筋梗塞になりやすいそうです。

腎臓病の発見のポイント

職場、地域で行われる健診や人間ドックを定期的に受けましょう。

  1. 血清クレアチニンの数値を確認します(基準値 男性は0.66~1.13mg/女性は0.48~0.85mgです。腎機能が正常の半分以下に低下して初めて血清クレアチニンが上昇し始めます)
  2. 尿たんぱく陽性の場合は、3ヶ月以内に再検査します
  3. 糖尿病、高血圧の人は、最低でも年1回腎臓病の検査を受けます
  4. 40歳以上の人は注意をした方がいいです。

血清クレアチニンは、腎疾患の進行とともに、腎機能が正常の半分以下に低下すると上昇し始めます。この時期に蛋白質の摂取を制限するとクレアチニンの上昇は押さえられます。

腎機能が正常の20%~30%以下になると腎不全となり、食事制限や生活指導を行っても血清クレアチニンは正常化せず常に軽度上昇しています。

腎機能が正常の5%~10%以下になると血清クレアチニンは高値となり、尿毒症の症状を呈して腎透析の準備が必要となります。

腎臓病の場合のむくみ

腎臓病の場合のむくみは、顔に出ることが多いです。目が開かなくなることもあるそうです。

足のむくみは、両足に出る時には、腎臓病、心臓病、肝臓病などが疑われます。片足に出る時には、リンパや血管に異常があるのではと疑います。

尿検査は正常でも、腎臓病

たんぱく尿は、腎臓の細かな血管が傷ついていないかを見ます。血液検査のクレアチニン値は、腎臓の濾過機能を見ます。

血清クレアチニン値で慢性腎臓病の診断基準を満たした人で、男性の89%、女性の94%は尿検査は正常だったという調査結果があります。尿たんぱくと高血圧の両方とも見られない人は、男性で37%、女性で49%いたそうです。

腎臓病が、尿検査だけでは見逃される危険性があるそうです。メタボ健診が始まってからは、クレアチニンの血液検査は必須項目から外されています。

尿検査は正常でも腎臓病であることもある、ということを広く知っておく必要があると思いました。 読売新聞 医療ルネサンス「腎臓の病気」から抜粋2009.11

腎臓病の人の生活の管理

血圧の管理と食事の管理が重要です。高血圧対策として減塩が重要です。

食べ過ぎを控え、意識的に体を動かすことで糖尿病や肥満の予防をすることも大切です。飲酒は適度に、タバコは止めてください。

腎臓病の人の食事の管理
  腎臓病の予防 腎臓病の治療
塩分 少なく 少なく
たんぱく質 十分 少なく
カリウム(K) 多めに 少なく(不整脈や突然死を起こす)

上のように、予防と治療では、真反対になることもあります。医師の指導の下に自分の今の病状に合った食事を摂るようにしないといけませんね。

血圧の管理も重要です。

診察室血圧で130/80mmHg 家庭血圧で125/75mmHg未満が目標です。

毎朝、起床時に血圧を測定して記録するとよいそうです。

薬物療法が必要になれば、血圧を調整する仕組みに働きかけるARBやACE阻害薬などの降圧剤が使われます。

減塩のヒント

慢性腎臓病の悪循環を断ち切るための最大のポイントは減塩だそうです。1日の食塩摂取量は6g前後が目標です。調理や食べ方に工夫をして1日6gを達成したいものです。

  1. だしを上手に使う(昆布、煮干し、かつおなどのだしを効かせて塩気が少なくてもおいしくいただけるようにする)
  2. 新鮮な食材を使う(新鮮な食材の味や香りを楽しみために薄味にする)
  3. 酸味や辛みを利用する(酢、レモン、すだち、かぼす、ゆず、だいだいなどの酸味、わさび、しょうが、辛子などの香辛料、みょうが、紫蘇、三つ葉などの香味野菜を薄味料理の引き立て役に使う)
  4. 醤油は、「かける」から「つける」へ(しょうゆ、ソースは小皿へ出して、チョンとつける程度にする)

糖尿病性腎症の人の場合の経過

50歳代男性は、外食ばかりで油っこい物を食べ飲み歩いていたそうです。めまいがして病院で検査をしたら、血糖値が200mg/dlを超えていました。正常値は110mg/dlです。尿からは、たんぱくが出ていました。糖尿病から来る糖尿病性腎症と診断されました。 20代から血糖値が高いと言われていたのを放置していたそうです。9年前のことです。

6年前から、毎日インスリン注射を打ち、週3回血液透析に通っています。

血液(人工)透析時間を長くすると、体の負担が軽減

血液透析を受けている人は、全国で28万人だそうです。糖尿病性腎症が4割以上で一番多いようです。10年後の生存率は、透析患者全体では36%、糖尿病性腎症の人は28%と低くなっています。

人工透析は、通常4時間をかけて行われますが、1回に6時間以上かけて行う病院もあります。そうすると、10年生存率は全体で70%、糖尿病性腎症の人でも71%だったそうです。理由は不明ですが、血圧が下がって心臓病になる人が減ったことが良い結果になっているのではとのことです。

保険の診療報酬も時間が長いほど高くなるように2008年に改訂されたそうです。透析時間を4時間未満、4~5時間未満、5時間以上の3段階に分けられたいます。長時間をかけて老廃物を取り除く方が、体への負担は軽くすみますが、多くの透析患者を抱える病院は施設に余裕がない所も多く、できない所もあるようです。

腎臓病の検査法

尿検査
タンパク尿を調べます。糖尿病の患者さんは、微量アルブミン尿検査を行います。血尿や蛋白尿、糖尿だけでなく、色や泡立ち、比重、pH、においなど非常に多角的に見ます。
血液検査
血清クレアチニンを調べます。血液検査で腎臓の働きを知ることができる検査です。CRと略号を使うこともあります。腎機能(腎臓の働き)が正常ならば年齢と男女で異なりますが 0.5~0.9程度です。腎機能が低下すると次第にこの値が増加し、2.0を超えると腎機能は30%以下、8.0mg/dlを超えるとほぼ5%以下となり透析による治療を行わないと生命に危険が及びます
腎生検
腎臓病の診断だけでなく、重症度の判定、治療方法の選択や治療効果の判定、今後の病気の進行の予測に重要な情報を得ることができます。検査は、ベッド上に腹臥位となり局所麻酔をした後、皮膚の上から細い針を数回刺して腎臓の組織の一部(直径1mm、長さ1~2cmを数本)を採取してきます。検査時間は圧迫止血する時間を含めて30分から1時間程度です。

腎臓病の治療法

食事療法
慢性糸球体腎炎で腎機能が正常であれば、塩分制限(6g/日)以外には特に食事療法は不要です。肥満の人はダイエットする必要があります。最近の研究では、肥満だけでも腎障害が起こることが報告されています。
生活習慣
安静、運動、スポーツは疲れすぎないようにします。趣味は文化的なものを。家事も疲れないように。保温に気をつけます。秋から冬にかけて腎臓病が悪くなることが多いです。お酒は適量、たばこは禁煙。薬や健康食品は主治医に相談してから使いましょう。妊娠・出産も主治医に相談しましょう。感染症や風邪は腎臓を悪くするので、注意が必要です。
薬物療法
血圧を下げる薬として、ACE阻害薬やARB、利尿薬としてCa拮抗薬などが使われます。血圧は、130~80mmHg未満になるようにします。副腎皮質ステロイドホルモン剤は、腎生検の結果、活動性が強く、腎不全に進行する可能性の強いような患者さんに投与されます。その他免疫抑制剤やステロイド静注パルス療法なども行われます。抗血小板薬のペルサンチン、コメリアン等の抗血小板薬を慢性糸球体腎炎に用いられます。抗凝固剤のヘパリン、ワーファリンが用いられます。糸球体の毛細血管の血液凝固が、慢性糸球体腎炎を進行させます。漢方薬は、柴令湯(さいれいとう)、五苓散(ごれいさん)、猪苓湯(ちょれいとう)などが用いられます。

最近の研究、「レップ細胞」に注目 2013.11

東北大学の山本教授の研究によると、マウスの実験で腎臓にあるレップ細胞が、腎機能低下に関与していることがわかりました。腎臓の線維化の原因は、このレップ細胞にあるそうです。レップ細胞が悪玉化することで、腎臓が線維化します。

幸いにも、このレップ細胞は、もとに戻る性質があることがわかったそうです。近い将来、どうしたら悪玉化したレップ細胞が元に戻り腎機能を良くしてくれるのか解明され、そして1日も早く良い薬ができることを期待しています。

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Author:Tomoko Ishikawa Valid HTML5 Valid CSS

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更新日:2020/03/15