がんの放射線治療

現在では、2人に1人がガンになり、3人に1人がガンで亡くなる時代となりました。これは、人間が長生きできるようになったこととも関連していますが、なるべくなら、ガンにならずに老衰で死にたいとも思います。

癌治療には、手術、放射線、抗がん剤などの治療法がありますが、ここでは、放射線治療法について特記したいと思います。

日本人のガンと放射線治療

2010年、10月28日、「がんの放射線治療」をテーマにした医療ルネッサンス宇都宮フォーラムが開かれました。東大病院放射線科准教授・緩和ケア診療部長・中川恵一さんが講演された、「放射線治療のススメ」からの話です。

ガンは老化の一種で、ガン細胞は30~40歳ぐらいから年齢とともに増えてくるそうです。世界の中で、日本が一番がんで死亡する割合が高いのは、世界一の長寿国だからだそうです。

昔は胃ガンが一番多かったのですが、原因のピロリ菌の感染が減り、除菌も進んで胃ガンがぐんと減っているそうです。ウイルス感染が原因の子宮頸がん、肝臓がんも頭打ちになってきているようです。

一方で増加しているのが、肺ガン、乳ガン、前立腺ガン、大腸ガン、子宮体ガンなど食習慣などに密接に関連した欧米型のガンだそうです。

女性は乳ガン、男性は前立腺ガン楽天 で、肉食の増加で性ホルモンがたくさん分泌され、その刺激で増えているそうです。

白血病を除いて、ガンを完治させるには、手術か放射線治療のどちらかが必要です。日本では、圧倒的に手術が多く、胃ガンが多かった頃の意識がいまだ根強いからのようです。まるごと摘出できる胃は手術向きです。

多くのガンで放射線は、手術と同じ効果がありますが、日本では放射線の有効性が十分理解されていません。日本では癌患者の25%しか放射線治療を受けていません。米国では6割強、ドイツでも約6割が受けています。がんの半分は放射線治療というのが、世界の常識だそうです。

日本でもようやく、放射線治療を受ける患者が増えつつあるそうで、年間25万人程度です。10年後には2倍に増え、癌患者の2人に1人が放射線治療を受けると予想されています。

日本人男性で一番増えているのは前立腺ガンですが、放射線を当てたいところだけに集中する「強度変調放射線治療(LMRT)」という技術も広がりつつあります。

ガン患者の痛みなどをとる緩和ケアにも放射線は有効です。ガンが転移した骨に照射することで、痛みがとれるだけでなく、骨の再生も期待できるそうです。患者さんの辛い症状をとることは、結果的に延命にもつながります。

放射線治療の特徴とは

東大病院放射線科准教授・緩和ケア診療部長・中川恵一さんと読売新聞東京本社・医療情報部長・田中秀一さんの対談の問答です。

ガンが治る
放射線は、細胞の中の遺伝子をはさみで切るように切るので、ガン細胞が分裂して増殖できなくなります。また、放射線を当てられたガン細胞を免疫細胞が異物として認識し食べるようになるからです。
放射線治療の進歩
昔は患部にピンポイントで当てることができませんでした。そうすると、正常な臓器を痛めたり、周りの免疫細胞を殺したりしました。がんをやっつけるには、免疫細胞の力が必要です。なるべく免疫細胞には放射線を当てたくないので、ピンポイントの照射は大事です。
放射線治療で治せるガン
脳腫瘍は、基本的に手術が必要ですが、ほとんどの場合は放射線治療も併せて行います。喉頭ガンは、放射線と手術は同等の治療効果がありますが、今は放射線治療が中心です。子宮頚ガンは欧米では放射線が当たり前です。前立腺ガンも放射線の方が多いです。胃腸系以外のガンでは放射線が中心になりうると言うことです。ただし、全てが治るというわけではなく、手術と比べて同じような効果があるということです。
手術と放射線の違いは
咽喉のガンは、放射線なら声を失わずに済みます。顔のガンなら顔を傷つけることが多いです。臓器の機能や美容を保つことは放射線治療の大きな長所です。
被爆国ゆえに放射線治療が進まないのでは
原爆で亡くなった方はが浴びた放射能は少ない場合で4グレイでした。そのくらい全身に被爆すると死亡しました。喉頭ガンの患者が受けている放射線量は70グレイですが、放射線治療ではガン細胞にだけ当てるから大丈夫です。
医師が放射線治療の説明をしない
外科医は手術をすることが実績になるから当然手術を勧めます。米国のガン病院では最初に内科に行く場合が多いが、日本ではガンの診断を外科医がする場合が多いことも手術偏重をもたらしているようです。
放射線治療の副作用は
咽頭ガンでは、やや広い範囲に放射線を照射すると口が渇いたり、食べ物の味がかわったりします。肺ガンの場合は、正常の肺にも多少放射線がかかり、たばこをたくさん吸う人などでは肺炎のような症状が起こったりもします。
放射線での緩和ケアは
放射線で8~9割の痛みが取れます。痛みだけでなく、首の骨に転移して脊髄が圧迫されると、四肢が麻痺し手足が動かなくなることもあります。もっと上の方で脊髄を圧迫すると、呼吸を動かす筋肉の指令が行かなくなってしまい、生命の危険すら出ます。そういう時には、痛みが少しでも、予防的に放射線の照射を早めにやっておくという手もあるそうです。
手術と放射線治療の治療費の違いは
総額で言うと、放射線治療は手術の6~7割だと思います。治療費そのもものことですが。放射線は、基本的に入院する必要がないので、高額療養費制度が適用されると、限度額だけで済みます。手術で入院すると、差額ベッド代がかかるとまるまる自己負担になるので差が大きくなります。
放射線治療を受ける時の病院選びは
インターネットで「日本放射線腫瘍学会」のホームページを開き、「認定医」を見れば、都道府県で専門医がわかります。
いる病院と、専門医の名前が出てきます。まずは専門医のいる病院を選んでいただくのがいいと思います。  

放射線治療についてのQ&A

Q5年前、前立腺がんで放射線治療を受けて治りました。その後PSA値が少しずつ増加しています。再度放射線治療が受けられますか?

A2回放射線治療を行うことは難しいです、正常な細胞への悪影響を避けるためです。この場合はホルモン治療を行うことになると思います。

Q 58歳男性、7月に肝細胞ガンの手術を受けました。再発した場合、放射線治療は効果があるでしょうか?

A再発したガンの数が1~2個なら、放射線治療という選択肢はありえます。治療効果は手術と同じ程度だと思います。

Q放射線治療を受けた後、他の部分にガンはできないのでしょうか?

A 放射線をかけた周辺にガンができる可能性はゼロではありません。放射線誘発ガンといいます。その頻度は非常少なく、現実に心配する必要はありません。むしろ日本は体に広く当てる診断用の検査をやりすぎる面があります。この点には注意が必要です。

Q 日本の放射線治療医は650人程度、米国では6000人以上と聞きました。なぜ日本では増えないのでしょうか?

A 放射線治療を支える専門職の医学物理士なども少なく、仕事が非常に大変です。まず、放射線治療医の知名度がもっと上がって欲しいです。大事な仕事だと世間が認め、若い医師がやりがいを見出してくれればと思います。  

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Author:Tomoko Ishikawa Valid HTML5 Valid CSS

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更新日:2020/03/15