急性膵炎と慢性膵炎

膵炎は、急性膵炎と慢性膵炎に大きく分けられます。急性膵炎と慢性膵炎では、病気の起こり方に違いがありますが、両方とも30~50歳代の働き盛りの男性に多いそうです。

そして、アルコールの飲み過ぎで起こるケースが多いと言われています。大量飲酒、食生活の日常的な生活習慣が病気の発生に関係しているそうです。急性膵炎と慢性膵炎について調べてみたいと思います。

膵臓(すいぞう)とは

膵臓(すいぞう)の大きさ・形など

膵臓は、成人で長さが約15cmあり、右側(向かって左側)が太く、左側が細いくさび型の臓器です。

向かって左端は、肝臓の下にある十二指腸がコの字型に曲がった部分の間にはまりこんでいます。反対側の右端は、腹部の右端の脾臓まで達しています。

十二指腸側を膵頭部、脾臓側を膵尾部と呼びます。膵臓の中には、膵臓で作られた膵液を十二指腸まで運ぶ管の膵管が通っています。膵管は、十二指腸側に近づくにつれて合流し、最後は太い2本(主膵管、副膵管)になって、十二指腸につながります。

主膵管は、十二指腸につながる前に胆嚢から胆汁が流れてくる総胆管と合流します。膵管は十二指腸の壁を貫き、その内側に膵液を出しますが、膵管の開口部は腸の内側に向かって盛り上がっており、十二指腸乳頭と呼ばれます。

膵臓の働き・膵液の働き

膵臓楽天 (すいぞう)は、膵液と呼ばれる消化酵素を含む液体を分泌し、それを消化管に送り込む外分泌腺です。膵臓の体積の95%以上は外分泌部が占め、残りがランゲルハンス島です。

膵臓外分泌部からは、1日に約500~1000mlの膵液が分泌されます。膵液は3大栄養素の消化酵素を含んでおり、弱アルカリ性で胃液にて酸性になった食物を中和し、消化酵素を働かせます。

膵液は、鶏肉を20時間で溶かしてしまいます。ご飯は胃でおかゆ状にして、膵液でアミノ酸の状態にします。膵臓は、消化酵素を作る工場で、消化の8割を担っています。

ランゲルハンス島は、1個1個が微小な臓器と考えられ、インスリン、グルカゴンなどのホルモンを血液中に分泌する内分泌腺です。その数は100万といわれています。β細胞からは欠乏すると糖尿病となるインスリン、α細胞からは血糖を上昇させる働きのあるグルカゴンというホルモンが分泌されます。

急性膵炎とはトリプシンの異変から

急性膵炎は、膵液に含まれる消化酵素が、突然膵臓自体を消化してしまうことで起こります。それは、膵臓の中の消化酵素の中でも、たった一つの消化酵素に異変が起きて発生してしまいます。

その酵素はトリブシンです。トリブシンの異変(安全装置のはずれたトリプシン)が、他の酵素を活性化させ膵臓自体を溶かしてしまいます。

急性膵炎の症状

痛み
立っていられないほどの痛みが、急性膵炎の典型的な症状です。膵臓の周りには、神経が多く痛みは大変強くなります。多くは上腹部の痛みですが、背中、腰、腹部全体の痛みが起きることもあります。急性膵炎の痛みは、だんだんと強くなります。しかし、急性膵炎の場合、痛む程度と重症・軽症度は比例するとは限らないようです。
吐き気と嘔吐
多くは吐き気や嘔吐を伴います。膵臓の炎症が腹部全体にわたり、腸の働きが悪くなり、腸閉塞のような状態になるため、吐き気や嘔吐が起こると考えられています。
ショック症状
重症の急性膵炎では、痛みや吐き気、嘔吐ともに、ショック症状が起こることがあります。腎臓や肺、肝臓などの複数の臓器に同時に、あるいは次々に障害が生じ、その上出血が止まらなくなったり、意識がなくなったりする多臓器不全が起こるのが特徴です。感染症が加わると、発熱など敗血症の症状が出てきます。この重症急性膵炎は、死亡率が20~30%になる危険なもので、緊急の治療が必要です。

急性膵炎の原因

  1. アルコール・・・膵管と胆管が合流し、十二指腸に開口している部分に、アルコールの過飲で浮腫(むくみ)が生じると、膵管が狭くなり膵液の流れが悪くなります。
  2. 胆石・・・胆嚢から流れ出た胆石が胆管の十二指腸開口部に詰まり、胆汁や膵液の流れを止めると、膵液が膵臓内にたまってしまいます。そこへ胆汁が逆流すると、膵液が活性化され膵臓の組織を自己消化し急性膵炎が起こります。
  3. その他や特発性(原因不明)・・・内視鏡的胆道膵管造影検査後や、胃や胆石の手術後、薬物の使用や高脂血症などが原因のものもあります。また、検査をしても原因が分からない特発性のものもあります。

急性膵炎とアルコールについて

日本でも世界でも膵炎とアルコールの関係が認められています。膵臓の壊死は、1割程度に見られるそうで、元には戻りません。膵臓が腫れる程度の軽症の人では完全に治るそうです。

急性膵炎の検査

血液検査・尿検査
膵臓に炎症が起こると、膵臓の消化酵素のアミラーゼ、トリプシン、リパーゼなどが血中や尿中に大量にあふれ出ます。血液や尿にこれらの消化酵素の値が高い時には、急性膵炎が疑われます。
超音波検査・CT検査
CTは、膵臓の炎症の広がり、腹部や胸部の変化などを正確に把握し、病状の進み具合を判断できます。

急性膵炎の治療

  1. 絶飲・絶食・・・まず、絶飲・絶食がおこなわれます。食事をすると消化酵素の分泌を促進するため、絶食にします。また、腹部全体に炎症が広がり、腸の動きが悪くなるため、水を飲むことを禁止されます。軽症の場合には、絶飲・絶食を2~3日するだけで治ることもあるそうです。
  2. 膵酵素阻害薬・・・ 膵酵素が血中にあふれ出ると、それを引き金に呼吸不全や腎不全などの合併症を引き起こす恐れがあるため、膵酵素や種々の有害物の働きを抑える膵酵素阻害薬が使用されます。
  3. 抗生物質・・・ 感染症を防ぐ目的で、抗生物質が用いられます。膵臓に炎症が起こると、膵臓の組織や膿瘍部分に細菌感染が起こりやすくなります。特に重症膵炎で死亡する場合は、感染症が原因のことが多いそうです。
  4. 原因の除去・・・1.アルコールが原因の場合、禁酒します。2.胆石が原因の場合は、胆嚢を調べ、場合によっては、胆嚢を摘出手術を行います。3.高脂血症が原因の場合は、その治療を行います。
  5. 集中治療・・・ 重症急性膵炎では、いろんな臓器に機能不全が同時に起こるので、全身を管理し、集中治療のできる医療施設で治療を受ける必要があります。

慢性膵炎とは

慢性膵炎の患者は急性膵炎の患者の8倍いるそうです。そして、慢性膵炎の人は、一般の人に比べてすい臓がんによる死亡率が約8倍も高いという結果が出ているそうです。

慢性膵炎は慢性の炎症で、すい臓の細胞が破壊され、細胞が繊維化して機能が低下していく病気です。炎症が続く間、繊維化や石灰化が起こって、膵臓が固くなります。そのため、急性膵炎は、ほとんどの場合障害なく治癒しますが、慢性膵炎は細胞が繊維化して機能が低下したまま回復することはありません。

ある女性の場合には、2年前に食べると嘔吐したり、お腹がしくしく痛むという症状から、胃の病気と言われました。しかし、血液検査や胃の内視鏡検査でも異常がありませんでした。1ヶ月後、背中の痛みと腰の痛みが出て整体へ行った所、「胃だけじゃあない」と言われました。そして、大学附属病院で再検査したら尿アミラーゼが高値となっていて慢性膵炎と診断されました。

慢性膵炎の症状

慢性膵炎は長い時間をかけて徐々に進行します。そのため、現れる症状も病気の進行に伴って変化します。腹部の鈍痛、激痛、背部痛、吐き気などが繰り返し起こります。

また、慢性膵炎では、膵臓の組織全体が障害を受けるため、インスリン(血糖値を下げるホルモン)などを分泌するランゲルハンス島の部分も障害を受け、インスリンが十分に分泌されず、糖尿病の症状が起こってきます。

始めは強い腹痛や背部痛が現れますが、次第に痛みが軽減され最終的には痛みを感じなくなります。

一見自然治癒したかのように思えますが、実際は痛みを感じない程すい臓が破壊されているそうです。

慢性膵炎の原因

  1. アルコール・・・慢性膵炎は、大量飲酒を始めてから10年以上の30~50歳代の働き盛りの男性に多くみられます。アルコール自体が膵臓の細胞に障害を与える、アルコールによって膵液の性質が変わることが考えられます。アルコール単独だけでなく、食生活などの要因が加わり発症するようです。蛋白質や脂肪の多い食品接種で膵液の分泌が多くなりすぎて起こることもあります。
  2. 特発性(原因不明)・・・胆石症からくるもの(軽症が多い)、若い女性に多い家族性の膵石症によるものがあります。頻度は高くありません。

慢性膵炎の検査法

慢性膵炎は、今までは進行した状態でないと診断がつきにくかったそうです。しかし、九州大学の伊藤先生は、内視鏡の先端に超音波発信機を付けて検査し、早期慢性膵炎を発見されています。

検査は約20分でできるようです。膵臓の中に白い線が見えます。これは、膵臓にコラーゲンがついて線維化したものです。

急性膵炎の場合と同じく、血液検査・尿検査、超音波検査・CT検査、内視鏡的胆道膵管造影(ERCP)なども行われます。

自宅でできる慢性膵炎のチェック法

  1. ベッドでも布団でもいいですが、あおむけに寝ます。腰を浮かせます。(腰を上にあげます)すると、みぞおち付近の痛みが強くなります。(腰の下に枕を入れて、みぞおちを押さえるとより痛くなります)
  2. 体を横に向けると楽になります。

慢性膵炎の治療法

  1. 禁酒・・・アルコール性の慢性膵炎の場合は、何よりも禁酒が重要です。急性膵炎の予防の場合は飲み過ぎないことが基本でしたが、慢性膵炎では節酒ではなく、絶対的な禁酒が求められています。
  2. 膵石を取る・・・手術や体外衝撃波治療が行われます。
  3. 合併症の治療・・・膵嚢胞の治療を必要とすることがよくあるそうです。膵液の流れが悪いために膵管が拡張して痛みが続くときは、膵管と腸をつなぐ手術も行われます。膵炎が原因で糖尿病になった場合は、インスリンを補充して、糖尿病の治療が行われます。
  4. 薬物療法・・・痛みを和らげる、膵液の分泌を抑える、消化酵素を補うなどの症状に対する総合的な薬物治療が行われます。
  5. 食事療法・・・過食を控え、脂肪の摂取を制限します。刺激物などの膵液の分泌を促進するものを避けます。
  6. 日常生活の注意・・・慢性膵炎で傷害された膵臓の組織は、元に戻りません。これ以上、膵臓の機能を落とさないように、規則正しい日常生活をし、自己管理を行うことが大切です。

慢性膵炎の予防法

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Author:Tomoko Ishikawa Valid HTML5 Valid CSS

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更新日:2020/03/15