ノーベル賞

ノーベル賞の発表の時期になると、今年も日本人が誰かノーベル賞を取らないかなあと、ドキドキします。2010年も見事ノーベル化学賞に鈴木章北海道大学名誉教授と根岸英一アメリカパデュー大学特別教授の二人が受賞されました。誠におめでとうございます。

そして、お二人とも岡山にご縁があったそうです。鈴木章教授は、倉敷芸術科学大学で7年間教えておられたそうですし、根岸英一アメリカパデュー大学特別教授も岡山大学に来て指導してくださったそうです。

これからもお元気で研究に、後身の指導にご尽力いたたきたいと思います。

2010年・ノーベル化学賞

今年の化学賞は、アメリカ・デラウェア大学名誉教授のリチャード・ヘック(79歳)さん、鈴木章(80歳)さん、根岸英一(75歳)さん3人です。

この3人の業績は、2種類の有機化合物をつなぎ合わせて、第3の有機化合物をつくる「クロスカップリング」の分野で使いやすい方法を編み出したことでした。

種類の違う有機化合物をつなぐことは難しかったのですが、リチャード・ヘックさんが、1972年に「パラジウム」と言う金属を仲立ちにしてつなぐ方法を開発しました。

根岸さんは、1977年に「亜鉛」 と言う金属を仲立ちにしてつなぐ方法を編み出しました。

鈴木さんは、1979年に「ホウ素」と言う金属を仲立ちにしてつなぐ方法を編み出しました。

このことによって、複雑な仕組みの有機化合物を効率よく作ることが可能になりました。

特に鈴木さんの方法は、より安全で使いやすい方法として、高血圧やがんの治療薬、抗生物質、エイズ治療薬、殺菌剤などの医薬品やテレビや携帯の液晶画面、次世代の表示装置の発光素材として期待がかかる有機ELの合成など幅広い分野で活用されています。

日本の若者へのメッセージ(鈴木・根岸・野依)

鈴木章さんから
「精進努力」と言う言葉を色紙に書かれています。自分がそうであったわけではありませんがと、謙遜されていますが、精進努力された人だと思います。子どもの頃は、野球わしたり釣りをしたりしていたそうです。小中学校では算数・数学が好きだったそうです。化学の道に進むきっかけは、米のハーバード大のフィザー教授夫妻が著した「テキストブック・オブ・オーガニック・ケミストリー」という有機化学の入門書を手にし、数学よりも化学がいいと思ったからだそうです。北大の助教授の時に、ハーバード大のブラウン先生が書いた「ハイト゜ロボレーション」を読み、先生の元で勉強させて欲しいと手紙を書き、アメリカへ行き指導を受けました。
根岸英一さんから
「Pursue your lofty Dream with eternal Optimism」、日本語では、非常に高い夢を持ち、楽観主義でそれを追求しましょう、となります。夢は高ければ高いほどいいと言われます。あえて英語で色紙に書いたのは、世界語だから、日本は一流国の中で極端に遅れているそうです。生きた英語ができれば外国へ出やすくなります。ブロークンイングリッシュでかまわないそうです。説得力があれば、ブロークンイングリッシュでも世界はわかってくれると、根岸さんは言われます。化学には、まだやるべき仕事がたくさんあります。炭酸ガスを利用する植物の光合成を工業化させるなど光化学を発展させないといけないと言われています。
野依良治さんから
「時代の求める知は何か」と色紙に書かれました。これからは、知識・知恵で生きていかないといけません。若い人たちには、時代の求める知は何かを真剣に考えて欲しいと言われています。

スウェーデン王立科学アカデミーで、受賞者共同記者会見

2010年12月7日(日本時間)の午後、スウェーデン王立科学アカデミーで、受賞者共同記者会見があったそうです。

2人の共通の師であるアメリカ・パデュー大学の故ハーバート・ブラウン博士が生きていたらどのように報告したいか、との質問がありました。

根岸さんは「墓前に参り、あなたから学んだ多くの方法が結実したと報告しました」と話しました。

若者へのメッセージを求められた二人の答えは以下のとおりです。

鈴木章(北海道大学名誉教授・80歳)さんは「化学、とくに有機合成化学は、新しい物質を作り出せる創造的でおもしろい分野です。ぜひ挑戦してほしい」

クロスカップリングの未来について、根岸栄一(米パデュー大学特別教授・75歳)さんは「植物の光合成や、牛が草を食べて肉やミルクを作り出すことなど、人間がまだ実現できていない課題は多い。この分野は人類が抱える課題を解決できる可能性を持っており、それを実現する責任が研究者にはある」と強調しています。

日本人のノーベル賞・受賞者

名前 年齢 受賞理由
1949 物理学賞 湯川秀樹 42 中間子の存在の予想
1965 物理学賞 朝永振一郎 59 量子電気力学分野での基礎的研究
1968 文学賞 川端康成 69 「伊豆の踊子」「雪国」など、日本人の心情の本質を描いた、非常に繊細な表現による叙述の卓越さに対して
1973 物理学賞 江崎玲於奈 48 半導体におけるトンネル効果の実験的発見
1974 平和賞 佐藤栄作 73 非核三原則の提唱
1981 化学賞 福井謙一 63 化学反応過程の理論的研究
1987 生理学・医学賞 利根川進 48 多様な抗体を生成する遺伝的原理の解明
1994 文学賞 大江健三郎 59 「万延元年のフットボール」など、詩的な言語を用いて現実と神話の混交する世界を創造し、窮地にある現代人の姿を、見る者を当惑させるような絵図に描いた功績に対して
2000 化学賞 白川英樹 64 導電性高分子の発見と発展
2001 化学賞 野依良治 63 キラル触媒による不斉反応の研究
2002 物理学賞 小柴昌俊 76 天体物理学、特に宇宙ニュートリノの検出に対するパイオニア的貢献
2002 化学賞 田中耕一 43 生体高分子の同定および構造解析のための手法の開発
2008 物理学賞 南部陽一郎 87 素粒子物理学における自発的対称性の破れの発見
2008 物理学賞 小林誠 64 小林・益川理論とCP対称性の破れの起源の発見による素粒子物理学への貢献
2008 物理学賞 益川敏秀 68 小林・益川理論とCP対称性の破れの起源の発見による素粒子物理学への貢献
2008 化学賞 下村脩 80 緑色蛍光タンパク質(GFP)の発見と生命科学への貢献
2010 化学賞 根岸英一 75 クロスカップリングの開発
2010 化学賞 鈴木章 80 クロスカップリングの開発
2012 生理学・医学賞 山中伸弥 48 ips細胞の作製
2014 物理学賞 赤崎勇 84 青色発光ダイオードの発明
2014 物理学賞 天野浩 54 青色発光ダイオードの発明
2014 物理学賞 中村修二 60 青色発光ダイオードの発明
2015 物理学賞 梶田隆章 56 ニュートリノ振動
2015 生理学・医学賞 大村智 80 寄生虫による熱帯感染症の治療法の発見
2016 生理学・医学賞 大隅良典 71 細胞の自食作用(オートファジー)の研究
2017 文学賞 カズオ・イシグロ 63 新作品を書くたびに、推理小説、SF、神話の要素を織り交ぜて、ジャンルの融合に取り組み新境地を開拓し、小説の幅を広げた。長崎出身英国人作家

南部陽一郎さん中村修二さんは、アメリカ国籍です。カズオ・イシグロさんは、イギリス国籍です。

ノーベル賞とは

スウェーデンの化学者であるアルフレッド・ノーベル(1833年~1896年)は、爆薬のダイナマイトを発明して、大金持ちになりました。そのタケイナマイトを使って戦争が行われたことを悲しみ、遺言に「私が残した財産を、人類に役立つことをした人にあげて」と書き残して、亡くなりました。

「物理学、化学、生理学・医学の分野でもっとも重要な発見ないし発明をした人」「文学の分野で理想主義的なもっとも優れた作品を生み出した人」「国家間の友好と軍隊の廃止ないし削減と平和会議の開催ないし推進のためにもっとも尽くした人(平和賞)」をノーベルは表彰することを望んでいました。経済学賞は、1969年に追加されたので、遺言には記されていません。

アルフレッド・ノーベルの意志に従い、すばらしい発明をした人などに贈られるのが、ノーベル賞楽天 です。

1901年から、物理学賞、化学賞、生理学・医学賞、平和賞、文学賞が授与されました。1969年からは、経済学賞も加わり、6つの賞になりました。日本人は、経済学賞をのぞく5つ賞で、18人が選ばれています。

12月10日、スウェーデンのストックホルムで、ノーベル賞が正式に授与されます。

ノーベル賞の賞金と選考方法

賞金
ノーベル賞の賞金額は、1000万クローネで、約1億2000万円だそうです。同時に2人選ばれたら2人で分けます。3人なら3人でわけますが、3等分というわけでもありません。功績により異なるようです。
選考方法
審査は厳格、徹底した秘密主義であります。選考方式は、各分野の専門家や過去の受賞者に候補者を推薦してもらうそうです。その候補者をもとに、選考委員や委託された専門家がふるいにかけていきます。新しい原理や法則などは、誰が一番最初に発見したかという点を特に考慮するそうです。絞り込まれた少数から、選考委員の投票によって次の受賞者が決まります。

江崎玲於奈さんの「ノーベル賞への5か条」

1973年に物理学賞を受賞した江崎玲於奈さんが、「ノーベル賞をとるために、してはいけない5か条」を1994年のドイツのリンダウ会議で話された内容です。

ノーベル賞をとるために、してはいけない5か条
  1. 今までの行きがかりに捕らわれてはいけません。しがらみを解かない限り、思い切った創造性の発揮などは望めません。
  2. 教えはいくら受けても結構ですが、大先生にのめりこんではいけません。のめり込むと、権威の呪縛から逃れなくなる。自由奔放な若さを失い、自分の想像力も萎縮します。
  3. 無用なガラクタ情報に惑わされてはいけません。われわれの能力には限りがありますから、吟味された必須の情報だけ処理します。
  4. 想像力を発揮して自分の主張を貫くためには、戦うことを避けてはいけません。
  5. 子どものようなあくなき好奇心と初々しい感性を失ってはいけません。

江崎玲於奈さんが、リンダウ会議で話したのをノーベル物理学賞の選考委員が聞いて、翌年のスウェーデンの物理学専門誌に「江崎の黄金律」として紹介してくれたそうです。

若い研究者の方々、参考にして、自分の研究に役立ててください。

科学予算の基金化を、小林誠さん

小林誠さんは、2008年ノーベル物理学賞を受賞されました。現在は高エネルギー加速器研究機構特別栄誉教授をされています。

小林誠さんは、既存の研究費予算について、単年度予算の制約を受けない「基金」の形にして運営することにより、繰り越しが自由になり、研究現場で研究費が格段に使いやすくなるので、基金化をぜひ実現して欲しいと言われています。

今回、基金化の予算請求がされているのは、「科学研究費補助金」です。年間約6万件の研究が支援され、日本の学術研究を支える土台をなしています。

未知の世界を探求する研究は、予定通りに進まないことも多く、研究費を翌年に使いたい場合には、その手続きが必要になります。この手続きにかかる時間や手間はばかになりません。

世界の最先端をいくような独創的な研究は、自由な雰囲気で研究に没頭できる環境から生まれるものです。

「科学研究費補助金」の基金化は、公費による研究費を最も効率的に使えるようにする行政改革です。

「科学研究費補助金」が、自由な枠で使え、研究に没頭してもらえるようになって欲しいものです。2010.11.20読売新聞 論点から

益川敏秀さんの子育てへの助言

益川さんが、テレビで子育てについてのアドバイスをされていました。

  1. 勉強しろと押し付けるより、きっかけを作ってあげる。
  2. 子どもの好きなこと、長所を徹底的に伸ばそう。
  3. 先入観を持たさず、何事も続けさせよう。

高いところに目標を掲げて、身近なところからコツコツと努力し続けることが大切と言われていました。益川先生は、小学生の頃、勉強よりも外で遊ぶことが好きでした。宿題もしなかったそうですが、お父さんが科学が好きで、日食のことなどを詳しく説明してくれたそうです。それを、学校で友達に教えて自慢しているうちに、勉強をしてもっといろんなことを知りたいと思われたようです。

親は子どもと真剣に向き合うことが大切ですね。2010.12.10

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更新日:2020/03/15